キーエンスとプルデンシャルの「型」
営業の基礎となる「型」をどれだけ組織として大切に扱っているかが、その組織の営業力を左右します。
たとえば、スポーツ選手が基本のフォームや基礎練習を繰り返し行うように、一度学んだ型は定期的に立ち返り、体に染み込ませることが不可欠です。Back to the Basics(原点回帰)のカルチャーが根づいているかどうかは、営業組織の成熟度を映す鏡でもあります。
私が型の重要性に気づいたのは、プルデンシャルに入ってからでした。プルデンシャルには「ブルーブック」という保険営業の教科書があります。プルデンシャルでは営業のことをライフプランナーと呼んでいますが、新人から経験豊富なライフプランナーまで「何かあるたびにブルーブックに立ち返る」ことが習慣化されていました。
このようにして型の重要性を認識したわけですが、「そういえばキーエンスにも型があったよな」と気づきました。
プルデンシャルとキーエンスの型を、先ほど紹介した4つの要素と4ステップに簡易的に当てはめると次のようになります。

2社はこのように型をしっかりつくり、組織全体に浸透させているからこそ、成果をあげ続けられる「売れる組織」になっているのです。
「型」をインストールできれば、組織は見違えるほど強くなる
ここまでで、型の重要性はご理解いただけたのではないでしょうか。では、この型があると、組織は具体的にどう良くなっていくと思いますか?
この記事の最初に立ち戻ってみましょう。
営業における型とは、誰がやっても一定の成果が出せるように整理された営業の勝ちパターン(共通のやり方)のことでしたよね。
「誰がやっても一定の成果が出せる」とは、「売れない営業をつくらない」ことでもあります。
「売れない営業をつくらない」ために、組織は型を用意する必要があるのです。しかし、型をつくりあげ、それを浸透させられている組織は、私の体感では全組織の1割にも満たないと思っています。
型がない、あるいは型を浸透させられていない組織では、次のようなことが起こっています。
- 入社後、数日から1ヵ月間の初期研修を受ける
- 研修が終わると、すぐにOJTとして現場の商談に同行する
- OJTの担当者から最低限の営業知識や進め方を教わる
- 「あとはよろしく」といったかたちで、すぐに個人ノルマが課される
OJTの担当者によって教えることもバラバラ。相性が合わない場合は成果もあがらず、仕事が楽しくなくなってしまう。組織全体でも成果があがる人とあがらない人のバラツキが大きくなり、経営が安定しなくなる──。型がないと、こうした“負のサイクル”に陥ってしまうのです。
正直なところ、型をつくり上げ、それを組織に浸透させることの難易度は高いです。しかし、一度インストールできさえすれば、組織は見違えるほど強くなります。型とはそれくらい強力で、組織が何より優先して取り組むべき課題なのです。
次回は、「ステップ1:普遍的な原理原則(どの組織にも共通する型)」をどのように浸透させていけば良いのか、その方法を中心に解説します。