【インサイドセールスの革新 1】エンタープライズ開拓はフィールドセールスと“ニコイチ”で動くのが鍵
──基本を徹底することの大切さを、改めて認識できました。ここからは、インサイドセールスの課題や役割の変化についてお聞きします。昨今、どのような課題が顕在化していると感じますか。
最近とくに多く聞かれるのが、エンタープライズ企業の案件獲得に関する課題です。
エンタープライズはLTVが高いため、昔から開拓ニーズはありました。しかし、従来のBtoBマーケティングチームからのリードジェンだけでは、再現性を持ってエンタープライズ顧客を獲得するのは容易ではありませんでした。
結果として、BDRを立ち上げて能動的にアプローチしようとする企業が非常に増えているわけですが、アポイントの獲得はますます難しくなっています。
その原因として、電話やメール、メッセンジャー、SNSといったインサイドセールスの活動チャネル自体は大きく増えていない一方で、インサイドセールス導入企業が急増し、各社のアプローチ数が膨れ上がっていることがあります。それゆえ、もはや通り一遍倒なアプローチではアポイントがとれなくなっているのです。
──では、どのようなアプローチが必要になるのでしょうか。
たとえば「One to One」「Why you Why now(なぜあなたに、なぜ今なのか)」という観点を取り入れたアプローチの工夫は必要不可欠となっています。例を挙げると、特定の顧客層向けのコミュニティを立ち上げ、そこに誘致するのもインサイドセールスのひとつの施策です。また、レターを送る際も、量産したような手紙で送るのと、質にこだわって「招待状」として送るのとでは、反応率が違ってきます。

それから、当社における最近の成功事例として、インサイドセールスとフィールドセールスが“ニコイチ”で動くアプローチがうまくいっています。フィールドセールスは10社ほどのエンタープライズ顧客を担当し、その中でどう顧客開拓していくかをインサイドセールスと連携して進めています。
この動きは、Salesforceでの営業経験を持つメンバーの発案で始まりました。彼は「フィールドセールスと連携して動かない限り、エンタープライズ開拓はできない」という強い確信を持っていました。
このプロジェクトでは、まずフィールドセールスが初回商談でキーマンかを探り、もしキーマンでないとわかれば、インサイドセールスが別部署への商談獲得に動きます。その後、フィールドセールスが再びキーマンかどうかを確認する──このサイクルを繰り返します。
この連携により、フィールドセールスから「次のアプローチは誰にすべきか」「どのようなレターを作成すべきか」といった具体的なフィードバックが即座に入るようになりました。
これにより、レターの精度が向上し、アポイント率も高まるという好循環が生まれています。フィールドセールスと密に連携し、パワーチャートを描きながらターゲットを絞り込んでアプローチできる点が、成功の大きな要因だと考えています。
【インサイドセールスの革新 2】カスタマーインサイドセールスの登場
──そのほかに、インサイドセールスから聞かれる課題はありますか。

コンパウンド型で複数サービスを提供している企業が増えている中、クロスセルに課題を抱えるケースが増えています。
その理由は比較的単純です。これまでクロスセルやアップセルはカスタマーサクセスチームが担当することが多かったのですが、カスタマーサクセスチームはオンボーディングや顧客の活用支援にフォーカスしがちで、Expansion(顧客単価向上)の力を持っていない企業が非常に多いのです。あくまでお客様に紹介を打診するだけで終わってしまい、能動的にプッシュ型で別の部門にアプローチするといった動きがとれていません。
そこで、企業様の中に「カスタマーインサイドセールス」という役割を新たに設け、弊社がその機能を担うかたちでご支援するケースが非常にうまくいっています。カスタマーサクセスとはまた別のチームとして、既存顧客へのアップセル・クロスセルを目的とした商談獲得、場合によっては受注獲得までを弊社が担うかたちです。
カスタマーインサイドセールスの事例として、あるバックオフィス系ツールを提供している企業様があります。M&Aや新規事業で次々と新しいプロダクトを立ち上げているため、法務、経理、情シスなどターゲットとなる部署が多岐にわたり、それぞれゼロから開拓する必要があります。この部分を弊社のカスタマーインサイドセールスチームが担当し、成果を出しています。
すでに接点があり財布も開いている既存のお客様から、別の部門を抽出し、そのキーマンに対してアプローチしていく活動は、ABM(Account Based Marketing)に近いかたちと言えるでしょう。一度財布が開いている状況なので、話を聞いてもらえる可能性も高く、ソリューションが合致すれば受注できる可能性も高いのです。