激変の時代、変革に迫られる営業組織

株式会社JOENパートナーズ 代表取締役/営業コンサルタント 城野えん
慶應義塾大学商学部卒業後、グローバルIT企業に営業職として入社。新卒2年目に新製品受件数1位を達成。社内最年少でシンガポール駐在員となり、東南アジア地域でのパートナー企業開拓や新規顧客開拓を担当。国内外で、ニーズが顕在化していない顧客からの大型受注を次々と獲得した自身の提案営業のノウハウを、誰でも再現できる「仮説提案営業」メソッドとして体系化し、独立。IT・金融・製造業の大手企業~スタートアップの営業部門をメインに、伴走型の企業研修プログラムやコンサルティングを提供し、各社の売り上げアップに貢献している。
今、営業を取り巻く環境は激変しています。顧客のニーズは複雑化し、AIをはじめとしたテクノロジーの進化、業界トレンドの移り変わりなどにより、ほんの数ヵ月で「常識」が覆る時代になりました。
このような変化の激しい時代には、経験則や過去の成功事例だけに頼るのではなく、先を見据えて自ら考え、行動する力が不可欠になっています。
いま、BtoB営業組織でこのような課題を抱えていないでしょうか:
- 営業研修、ツール導入、インセンティブ制度の導入など、何らかの施策にすでに着手しているが、現場に定着せず思うような成果が出ない
- 膨大な情報に埋もれ、市場の変化に対応できず、スピーディーな意思決定ができない
- 営業スキルのバラつきを解消し、組織全体の営業力を底上げしたい
- 営業が顧客の「御用聞き」に終始し、本質的な課題解決につながる踏み込んだ提案ができない
こうした課題を突破するためには、施策を打つだけではなく、“組織の思考”そのものを変える必要があります。そこで今、営業組織が真っ先に備えるべきなのが「仮説思考」です。
本稿では、仮説思考とは何か、なぜ求められているのか、そして営業現場でどう活きるのかを解説します。
仮説思考とは?──変化の時代に必要な「まず動く」ための思考法
仮説思考とは、かんたんに言えば「完璧な情報がそろうのを待たずに、現時点で得られている限られた情報から、まずは自分なりの打ち手を考えて動いてみる」というスピード重視の思考法です。
動いてみた結果を冷静に振り返り、軌道修正を重ねていく──この、「仮説→行動→検証→改善」のサイクルをいかに速く、正確に回せるかが、今の営業には求められています。
<仮説思考のサイクル>

仮説思考と対照的なものが「網羅思考」です。網羅思考は、じっくり時間をかけて可能な限り多くの情報を集め、状況を細かく分析し、全体像を把握したうえで動く思考法です。
市場に大きな変動がなかった時代には、網羅思考のような慎重な進め方が有効でした。しかし現在では、状況の変化があまりにも速く、分析に時間をかけているうちに顧客の関心はすでに別の方向へ移ってしまいます。気づけば、競合が先にアクションを起こしている──そんな場面が当たり前になっているのです。
実際、あるグローバル製造業では、数ヵ月かけて既存顧客から情報収集を行い、壮大なアカウントプランを作成したうえで提案を行ったところ、数ヵ月前とは状況が変わってしまい、振出しに戻って提案しなおすことになった、あるいは、同業他社が先に話を進めてしまい、不利な状況で失注してしまった──といった問題がたびたび起こっています。
こうしたスピードと不確実性の時代に、私たち営業組織が変化に対応し、成果を上げ続けるには、網羅思考ではなく「仮説思考」を組織全体にインストールすることが不可欠なのです。
では、仮説思考をインストールすると、営業組織はどう変わるのでしょうか?