見込み通りの着地を可能にするパイプライン管理
営業マネージャーの仕事は多い。営業戦略を立て、KPIを設定する目標管理にとどまらず、マーケティングやインサイドセールスのような他部門との連携、部下の採用やコーチングにまで仕事の領域が広がっている。Sales Techは多忙な営業マネージャーの仕事の負担を減らすことにつながるものだ。
実際にその考えでSales Techを使っているのがセールスフォース・ドットコムである。宮﨑氏は、11年前に同社へ入社する以前も営業の仕事に従事していたが、当時は数字目標の予測ではExcel、日報ではWordを使っていたという。「Salesforce製品を始めとするSales Techを使うようになり、かなり仕事の内容が変わったと自分でも実感している」と宮﨑氏は述べ、Sales Techが役立つ以下の3つの分野を解説した。
- パイプライン管理:目標を実現するために行う営業の基礎
- ターゲティング:目標を実現するために狙うべき案件の特定
- ミーティング:実際に狙った相手にアプローチするためのトレーニングの場
3つのうち、もっとも詳しく解説されたのが、パイプライン管理である。多くの企業では、毎月の案件をExcelでリスト化し、受注確度のABC評価、受注金額予想や訪問回数などを管理していることであろう。その場合の悩みは、評価の基準が担当者によってバラバラで、打ち手が見えにくいことではないだろうか。Aランクの案件がBランクに変わったり、案件自体が消えたり、Aランクなのに数ヵ月もリストに残っていたりすることだ。担当者が受注確実なものしか入力せず、実態がわからないことも珍しくない。
見えないことを見えるようにするのに役立つのがパイプライン管理である。リスト管理から脱却し、パイプライン管理を成功させるポイントとして宮﨑氏は以下の3つを紹介した。
- 視野を広げ、顧客視点で商談ステージ設計をすること
- 商談ステージごとで行うべき顧客との合意事項を定義し、メンバーを導くこと
- 案件は初期段階から全部入れること
この実践でとくに重要になるのが「営業マネージャーが、部下を怒らないこと」だという。「失注は恥」という文化が染み付いている組織では、担当者は失注につながりそうな案件を隠したがる。いわゆる「柔らかい案件」を含め、すべての案件を共有できるようになるまでには短くて3ヵ月、長くて1年かかるという。部下に怒らないことがわかってもらえたら、次に営業マネージャーに求められるのは商談を進めるためのコーチングのスキルである。宮﨑氏は「パイプライン管理の肝は数字をつくることではなく、ファネルのかたちを整えること。営業マネージャーの仕事の醍醐味は、部下が持つ商談の進めかたについて適宜アドバイスをしながら、ファネルのかたちを適正に整えることにある」と語った。