商談ステージ設計では顧客を主語にすることが重要
では、ファネルのかたちを決める商談ステージはどのように設計すればいいのか。セールスフォース・ドットコムの場合、「案件の可能性があるか」「課題の認識を(お互いに)合意しているか」「変化に(お客様が)メリットを感じているか」「意思決定者を含め、(お客様が)会社の問題として認識しているか」「今後の進めかたや体制の合意はあるか」「金銭面の合意はあるか」「書類の取り交わし」の7つに加え「受注、商談完了」の8つで管理しているという。
間違えてはならない商談ステージ設計でのポイントは「顧客の購買プロセスに商談プロセスを合わせること」にある。仮に自社の視点から「見積書の発行」を商談ステージのひとつに決めたとしても、途中の商談で見積もり条件は大きく変化する可能性が高く、受注確度の判断材料にはなり得ない。独りよがりにならない事実ベースのパイプライン管理を実現するには、主語を顧客にして商談ステータスを把握することが求められる。
秋津氏は、Salesforceの画面でデモンストレーションを行い、営業担当者の視点で案件情報の確認方法を紹介。案件ページを見れば、その案件がどのステージにあるのか、決裁者や予算の確認はできているかなど、各ステージで行うべき「成功へのガイダンス」を確認できる。次のステージに進めるための合意事項が明確なので、新人や初めて提案する製品の場合も対応ができる。
また、それぞれのステージの商談総額をリアルタイムに把握することも重要である。マネージャーが見るダッシュボードの画面では当月の目標達成状況を確認できる。月末までに達成が難しいとわかったとしよう。パイプラインの中身を調べれば、初回の訪問が可能な案件を発見し、挽回の計画を立てることができるかもしれない。リスクの兆候にすぐ気づくことができるのがパイプライン管理の優れたところでもある。
さらに、リスト管理では難しい将来予測はAIが得意としている領域である。Salesforce Einsteinをパイプライン管理に使うと、案件データや担当者のデータをAIが学習し、月末の売上着地予測やフォローするべき案件のレコメンドで営業担当者をサポートしてくれる。AIを使うべき理由は、顧客とのやり取りや見込み客の開拓のような業務に使う時間を増やすためだ。セールスフォース・ドットコムが2018年4月に全世界の営業関係者に対して実施した調査結果によれば、営業担当者は時間の66%を付帯業務に費やしていることがわかった。AIはその付帯業務を効率化することに役立つ。