日本型組織に求められる「一枚岩」のリードマネジメント
10年以上にわたって「The Model」を運用してきた経験から、宗像氏は日本型組織への適用について警鐘を鳴らす。
「The ModelはSaaSかつ米国式の分業営業組織には適していますが、日本の営業組織には必ずしもフィットしません。一見美しい分業モデルですが、そのまま導入してもうまくいかないことが多い。むしろ、日本の営業組織の良さを失いかねません」(宗像氏)
日本の営業組織の強みは、受注・売上に対してマーケティングと営業が協力し、一枚岩になれることにある。「現場の強さ」こそが日本の営業組織の特徴だが、米国式のモデルを導入するほど、その強みが失われていく傾向にある。
「部門間で責任の押し付け合いが始まり、結果として顧客が他社に流れていく。そして自分の目標が達成できないことで怒られる。たいへんな思いをして稟議を通して導入したのに、こんな結果になるのかと不満がたまる」と宗像氏は、多くの企業で見られる失敗パターンを説明する。
この状況を打開するために必要なのが、マーケティングベロシティのような全体最適の指標だ。導入には、次の図のような段階的なアプローチが必要となる。

また「商談率が低い、成約率が低い、商談期間が長いといった課題は、それぞれ個別の問題ではなく、リードマネジメントの質に関わる問題」だと宗像氏は指摘する。
たとえば、商談率が低い場合の改善指標として重視されるものに次の2点があるという。ひとつは「リード品質スコア」だ。企業規模、予算確認、決裁者接点、課題確認といった要素でスコアリングを行い、80点以上のリード比率を50%以上にすることを目標とする。もうひとつは「商談準備度」で、事前準備チェックリストや必要書類の完備率、顧客情報の充実度などを数値化し、準備完了率80%以上を目指す。

成約率の改善には、決裁者接点の早期確保が鍵となる。「多くの場合、決裁者との接点が遅すぎるという問題があります」と宗像氏は語る。初期接点での決裁者面談率50%、提案前の決裁者承認率80%といった具体的な数値目標を設定し、組織的な取り組みを進める必要がある。

商談期間の短縮に関しては、情報提供の適時性と意思決定要件の明確化が重要だ。24時間以内の応答率95%、資料提供3日以内90%、見積もり5日以内提出率95%といった指標を設定。さらに、要件定義書の完成度やステークホルダーの合意率、導入計画の具体性といった要素もしっかりと管理する必要がある。

本当の意味での営業DXとは
「今、営業の現場では『このシステムを使え』『あのシステムをやれ』と言われることが増えています。しかし、本当の意味での営業DXとは、こうした指標を活用しながら、お客様とのエンゲージメントの中で自分が成長できる機会を作ることではないでしょうか」(宗像氏)
これらの改善指標は、単なる数値目標ではない。リードを「生もの」として大切に扱い、適切なタイミングで必要なアクションを取るための羅針盤となる。

「部分最適のKPI管理から脱却し、全体最適のKPIを導入することが、これからのマーケティング・営業組織の肝となります。ただし、指標の導入だけでは不十分です。その指標を使って、具体的にどう改善していくのか、組織としての取り組みが重要になります」(宗像氏)
マーケティングベロシティを軸とした新しいマーケティング・営業組織の構築は、デジタル時代における日本企業の競争力強化の鍵となるだろう。単なるシステムの導入や数値管理の改善ではなく、顧客との関係性を深め、組織全体の成長を促す新しい営業のかたちを実現するものとなるはずだ。
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