見込み客の「脳内SEO1位」を獲得 インサイドセールスへの期待
──『インサイドセールス 実践の教科書 立ち上げから組織づくり、事業成長まで』(翔泳社)の上梓おめでとうございます。どのような課題に基づき、2社による共著で本書を刊行されたのでしょうか。
栗原(才流) インサイドセールスが日本に登場して約10年、非常に素晴らしい書籍が多数出版されました。その功績も踏まえながら「インサイドセールスに取り組む企業が増えた今こそ、より実践的な知見やノウハウに関する書籍をつくりたい」と考え、本書の執筆に至りました。
当社はインサイドセールスの研修やコンサルティング支援を行っており、概論やフレームワークをお伝えする面では実績があります。一方で、組織は何人で立ち上げるべきか、メールの内容や送信する時間、フォローの頻度といったノウハウは、実際にインサイドセールスを実践していないと説明できません。
そこで、我々の顧客のインサイドセールス立ち上げやパートナー開拓など、数々のプロジェクトをご一緒しているセールスリクエストさんに協力をお願いしたのです。
原(セールスリクエスト) お声がけいただいて本当にありがたかったです。我々は2019年ごろから才流さんの顧客企業のインサイドセールスを支援しています。才流さんがマーケティング戦略を立案し、我々が最初の顧客接点において実際に折衝を担う中で、全体最適から部分最適まで網羅したノウハウ・ナレッジが蓄積されていました。
加えて、インサイドセールスは商談数の最大化という短期的な成果に限らず、サービスやプロダクトのファン形成に直結する重要な部門だとつねづね感じていました。この視点を持って、発信したいと思っていたところで、書籍執筆の話をいただいたのです。
──改めて、インサイドセールスの重要性や期待を教えてください。
原 顧客接点を強化できるため、当然、商談機会が増えます。しかしそれ以上に重要な価値は、自社やサービス・プロダクトのファン形成につながることです。
多くの場合、顧客は自社が抱える課題を整理できていません。そこでインサイドセールスがテキストと言語コミュニケーションを用いて顧客の課題を整理し、方向性を示すのです。そのときは商談につながらなくても、顧客からは「良い会社だ」と認知されるでしょう。インサイドセールスの活動は、顧客のニーズが顕在化した際、真っ先に想起される「脳内SEO1位」の獲得に直結するのです。
栗原 インサイドセールスの重要性や期待は、事業のフェーズによって異なります。事業の立ち上げ期やPMF(Product Market Fit)前は、代表やフィールドセールスが一気通貫で商談獲得から営業、カスタマーサクセスまで行うため、インサイドセールスは必要ありません。事業拡大のフェーズで初めて、商談・受注獲得の効率を上げるため、分業によるインサイドセールスが必要になります。
PMFしたのち、次のPMFに向けて新しいセグメントを開拓していくフェーズでは、市場の見込み客の声や状況の変化をフィードバックする機能が必要になります。そこでもっとも市場との接点を持つインサイドセールスが、活動の中で得た情報をプロダクトマネージャーや事業責任者へフィードバックする役割が期待されます。