社外から集めた情報では意味がない? 価値があるコンテンツとは
4.メンバー主体ではなく、運営主体のコミュニティになってしまう
コミュニティを始める際、コミュニティメンバーにとってのメリットを十分に考えられていないことも多くあります。たとえば「アップセルしたい」という自社の目的に沿ってアップセル商材に関するコンテンツばかりを発信しても、それがコミュニティメンバーの課題解決につながらなければ、誰もそのコミュニティに参加したいとは思いません。コミュニティメンバーは自分の課題を解決できる場所、欲しいつながりを得られる場所を求めています。
そしてもうひとつ大切なのが、コミュニティは盛り上がるまで時間がかかるということです。たとえばカスタマーサクセスでも、1年契約のサービスであれば、施策の最終的な効果検証には最低でも1年はかかることが多くあります。コミュニティは盛り上げた先に効果が出ると考えるとさらに長く、2~3年は必要となるため、解約率に影響したかどうか1年では到底見極められません。そのため短期的な成果を求めすぎず、長期的な視野で、メンバーにとって価値のある場所づくりを優先することが重要です。
5.メンバーへの提供価値が不足している
コミュニティメンバーを増やそうとして、メンバーが抱える課題に合わせた情報を、ただ社外からかき集めたものをコンテンツ化してしまうケースもお見受けします。自社ではない外部コンテンツをただ集めても、それは外にもある情報であるため、価値や競合優位性は発揮できず、メンバーはより専門性の高いほかのサイトやコミュニティに流れてしまうでしょう。
一例ですが、サポート業務に関する商材を提供している企業のコミュニティでは、サポート業務のノウハウやよくある困りごとといったコンテンツが人気を集めました。また、営業効率化のプロダクトを提供している企業では、営業のKPI設計に関する情報が好評でした。メンバー自身が、なぜ自分はこの企業が運営するコミュニティに参加するのか、きちんと説明できる価値を提供しなければなりません。
このような話をすると、よく「うちの会社にはコンテンツ化できるようなナレッジやノウハウがない」という方がいらっしゃいます。しかし、それは誤解だと言えるでしょう。プロダクトを開発した経緯や理想的な活用方法、イベントの登壇事例など、深掘りする材料はたくさんあります。他部門と連携することで、メンバーにとって価値ある「隠れたコンテンツ」が見えてくるでしょう。
「新たな活用方法」「深い専門知識」 つながり自体が価値に
これらのよくある失敗を踏まえて、BtoBコミュニティにおける具体的な課題と解決策・成果の事例を紹介します。
まずはプロダクト開発についてです。プロダクト開発部門は通常、顧客との直接的な接点がないため、コミュニティメンバーの声は営業やカスタマーサクセスを介して届くことになり、時間がかかったり、伝言ゲームのように本意が変化したりする課題があります。
しかしBtoBコミュニティがあれば、開発部門が直接メンバーと対話できます。デザインや機能の開発について具体的な質問を投げかけて意見を募ったり、想定外の声も含めてスピーディーに収集できることで、プロダクトの開発スピードと品質の向上につながります。
ふたつめがプロダクトの利用促進です。おもしろい事例として、RPA(Robotic Process Automation)を提供している企業の取り組みがあります。RPAはさまざまな活用ができますが、導入理由となった課題を解決したあとは、ほかの機能の活用に目が向きにくく、単一目的の利用となり価値が縮小しやすいという課題がありました。
そこでこの企業では「オンボーディング完了同期会」という取り組みを始めました。導入から約3ヵ月後に、同時期に導入した企業同士が集まり、どのような仕組みをつくったのか発表し合うんです。すると「そんな使い方があったんですね!」という発見が生まれ、他社の事例をヒントに新しい活用方法に挑戦する顧客が増えました。営業やカスタマーサクセスが提案するよりも、実際の顧客の生の声のほうが説得力があり、効果的だったようです。
3つめがユーザー同士による課題の解決です。実はプロダクトに関連する業務知識について、ユーザーの方がくわしいということはめずらしくありません。専門的な業務がかかわる質問に対してカスタマーサクセスがなかなか回答できないケースも多いのです。 しかしコミュニティがあれば、同様の課題を持つメンバー同士で解決することができます。知見のあるメンバーをつなげられること自体が価値となり、さらにカスタマーサクセス自身も新しい知見を得られ、ほかのメンバーへのサポートに活かせるようになるでしょう。