働き方にあらゆる制約がある現代。「事業成長」と「メンバーの成長」という責任を一手に背負う営業マネージャーの苦労は計り知れず、どのマネージャーも多かれ少なかれ似通った課題を抱えているのではないだろうか。2024年7月12日にSalesZineが開催した「SalesZineDay 2024 Summer」のセッションには、『無敗営業』シリーズ、『営業の科学』の著者であるTORiX 代表取締役 高橋浩一さんと、『急成長を導くマネージャーの型』著者でEVeM CEO 長村禎庸さんが登壇。よくあるマネジメント課題について、体験と理論を交えたおふたりならではの実践的アドバイスをご紹介いただいた。
「どこに介入するべきか」「自分がやるべきか」考える
宮田(SalesZine編集部) さっそくひとつめのあるある課題にお答えいただきます。「自分でやったほうが早いと仕事を巻き取ってしまう営業マネージャー」におふたりならどうアドバイスをされますか。
高橋(TORiX) 営業マネージャー自身、具体的にどのように介入すれば良いかわかっていないケースも多いです。まず、介入のあり方を整理する必要があるでしょう。そのうえでヒントやアドバイスを渡し、任せるか任せないかを判断します。
具体的には、商談の一覧を出してもらい、その商談をさらに分解してかかわり方を変えていきます。次の図では魚釣りにたとえていますが、仕事において「なんとなく全体がダメ」ということはなく、介入するべきポイントは明確にできるはずなんですよね。
高橋 人に任せられないマネージャーは感情に走ってしまいがちで「自分が行かなきゃ」となってしまう。しかし、実際にはそんなことはないですし、メンバーに任せる案件を戦略的に持っておかなければ、いつまでも成長スピードが上がりません。マネージャーに必要なのは支援の際に提示できる解決策をたくさん持っておくことができるかです。
長村(EVeM) 先ほどの高橋さんの図をスプレッドシートに落として運用するイメージがわきました。各プロセスにおいて「この人だったらここまではOK」「ここからは難しい」という線引きが可視化できるため、印象や感情、バイアスなどを抜きに接することができますね。ぜひ真似してみたいです。
宮田 長村さんは「自分がやったほうが早い」という考え方をどう思いますか。
長村 たしかに、自分でやったほうが早いのは事実かもしれませんが、論理的でありません。「自分がやるべきだからやる」と考えるのが正しいと思うんです。
マネージャーの業務は2種類です。「決める」か「実行する」か。
まず「決める」ことについて。「(1)決定は後戻りできるものかどうか」「(2)決定は事業に大きなインパクトがあるのかどうか」を判断してください。後戻りもでき、事業に大きなインパクトもないのであれば、決める権限もほかのメンバーに移譲すれば良いでしょう。「実行する」ことに関しては、「(1)あなた自身がやれば、結果が変わるのか」「(2)業務が重要か否か」この2点ですね。誰がやろうが「質」がさほど変わらないのであれば、その業務は委譲すれば良い。
宮田 メンバーに対してどういうアクションをしようかと考えてしまいがちですが、まず「自分がやるべきか」に立ち返り自問自答する。とても大事なことですね。