「NEW SALES」へシフトする「7つのS」
テクノロジーの進化によりモノの売り方・買い方が変化した現代、営業は顧客も自覚していない課題を見つけ、気づきと発見をうながし、購買の意思決定に寄り添うことが求められる。高度な判断とスキルが求められる反面、実践できれば営業生産性は大きく向上し、個人・企業における「営業」の仕事は大きく変わる。それが、これからの新しい売り方「NEW SALES」だ。
『NEW SALES 新時代の営業に必要な7つの原則』(麻野耕司 著、ダイヤモンド社)の著者である麻野氏は、組織人事コンサルティング会社に17年従事したのち、2020年にナレッジワークを創業。営業や経理、開発といった1つひとつの「仕事」を変えることで、働くことをよりおもしろいものに変えようと活動を続けている。その第一歩として取り組んでいるのが「セールスイネーブルメント」だ。
「NEW SALES」へのシフトはかんたんではないと麻野氏。本書では、「NEW SALES」に求められる考え方と具体的な方法論を「7つのS」として整理。前半の4つは営業担当個人に向けて、後半の3つは組織(営業管理職)に向けて「セールスイネーブルメント」の実践方法を解説した。
7つのS
<現場で働く営業担当者向け>
- STORY:顧客の「願望」を実現する「ストーリー営業」
- Surprise:顧客に「驚き」を届ける「サプライズ営業」
- Scenario:「顧客視点」で背中を押す「シナリオ営業」
- Sympathy:顧客のキャラクターに合わせる「シンパシー営業」
<組織を動かす営業管理職向け>
- Share:知識を共有して育てる「シェア営業」
- Score:データを活用する「スコア営業」
- Significance:仕事に意義を感じて働く「意義営業」
セールスイネーブルメントの実践で、営業は「おもしろい仕事」へ
「NEW SALES」に実践するには企業や事業部門全体の取り組みが欠かせないと麻野氏。経営を担う営業役員・営業企画担当者向けとしてSpecial Chapterを設け、従来の「人材育成」における課題(現場での実効性や再現性)を指摘しながら、「セールスイネーブルメント」の実現に必要な4つの領域を紹介した。
- 「ナレッジ領域」成果を上げるためにできること(CAN)を最大化する
- 「ラーニング領域」能力を高めるためにできること(CAN)を最大化する
- 「ワーク領域」成果を上げるためにやるべきこと(MUST)を明確にする
- 「ピープル領域」能力を高めるためにすべきこと(MUST)を明確にする
従来の人材育成やセールスイネーブルメントでは「能力向上」を主眼に置き、ラーニング領域・ピープル領域のみが取り組まれていたという。しかし麻野氏は、効率的に商談の質を変えて成果を上げるには「ナレッジ領域」(営業資料や営業動画、営業ノウハウの展開)や「ワーク領域」(成果を生み出す営業プロセスの設計)から始めるべきだと指摘。必ずしも専任担当を置く必要はないが、「特に営業部門の人員が10人以上になれば、一定の工数を『セールスイネーブルメント』にかけることで、確実に営業部門全体の生産性が向上します」(p202)と、営業責任者・営業企画担当者へセールスイネーブルメント導入への決断をうながす。
本書の出版から2年が経つ2024年現在、購買プロセスの変化や労働人口の減少、働き方の多様化など、営業を取り巻くビジネス環境はますます複雑さを増している。そうした中、個人および企業はどのように「NEW SALES」へシフトし、「『営業という仕事はおもしろい』と思えるような世の中」(p207)をつくっていくべきか。その第一歩を見つける手がかりとして、ぜひ本書を活用してほしい。