営業組織を取り巻く3つの課題
「テトリス」のように解決へ導く伴走支援
──さっそくおうかがいしたいのですが、そもそも企業がSFA/CRMを導入する際、どのような課題があるのでしょうか。
藤井 導入企業には主に3つの課題があります。ひとつめは、HubSpotのような多機能ツールをどう活用して成長につなげるかという経験が不足していることです。さまざまなサービスと連携できる万能なオールインワンプラットフォームを導入したとしても、実際にどの機能を、どのように使い、具体的にどう成長していけば良いのかというビジョンを描くには、ある程度の経験値が必要でしょう。
ふたつめは人材不足で、導入後の体制維持が難しいことです。ツールを導入したものの、優秀なマーケター人材ほど転職してしまう。そのためノウハウが蓄積されず、DXツールの複雑な設定だけが残され、体制を維持していくことが難しいという声をよくお聞きします。
3つめは、今やるべきことと実態のギャップを埋められていないことです。現状把握とレベル評価ができている企業は少ないですし、理想論だけで判断されてしまうこともあります。具体的なアクションを起こすにも、優先順位や実行・運用体制が整っていないケースが多いのです。
──ツールへの知見や客観的な視点の必要性はもちろん、導入を進んで行う人材の流動性の問題はたしかに大きそうですね。
藤井 まさに実装の経験を持っていたり、仮説検証ができたりする人材は必須ですが、アイデアを成果につなげる体制づくりができていない企業は本当に多いです。その状況を踏まえて私たちは、お客様の現状を他社と比較しながら評価し、レベル感に合わせて 何をすべきかを整理します。そして、課題解決の優先順位を付け、できるところから着実に進めていきます。いわば「テトリス」のように、目の前にあるすき間だけでなく、その先にあるすき間や全体感を見据えていかに効率良くブロック(=課題)を消していくかというアプローチでプロジェクトを推進します。
最終的な目標は、顧客企業が自社で課題を見つけ、解決できる組織になること。私たちは、ツール導入だけでなく、マーケティングカルチャーの定着に向けた改善サイクルづくりがミッションだと思っています。そのためには、さまざまなツールを知っていなければいけませんし、システムの関連性も理解していなければなりません。それらをキャッチアップし、実装方法を考えるのも我々の役目です。
とくに改善サイクルを回せるか否かは重要なポイントで、「課題」なのか、ただの「問題点」なのかでも状況は変わってきます。しっかりと深掘りしていくと、システムではなく組織の問題やノウハウ不足などが見えてきて、どのような解決策につなげていくべきかがはっ きりします。答えは必ずしもシステム導入とは限らないのです。
次になにをするべきなのかを整理して、事業を整備し、どのような投資をしていくかを一緒に考えていく。場合によっては、BPOメンバーとして参画して支援する。そしてステップを踏んで、適切なDXにつながるようにプロジェクト設計をするというのが、私たちの特徴であり、HubSpotパートナーとして最大限HubSpotを活用し営業改革を実現できると言えるでしょう。
2年でMRR5倍、製造業でSFAのUI改善も
クリエイティブホープならではの営業改革
──具体的なHubSpot活用支援の事例についてもいくつか教えてください。
藤井 たとえば、パナソニックインダストリー様を支援した際は、まずは複数の事業部で利用していたシステムとデータ、業務フローを可視化しました。共通の事業サイクルを洗い出し、理想的な構成を提案。活用できるデータを整理し、ダッシュボードのイメージまで作成することで、SFA/MAを用いてどのようにデータドリブンな意思決定をするか、その指針づくりと実装をご支援しました。
ピー・シー・エー様については、インサイドセールスの立ち上げとパイプラインの設計から、KPI策定、部門間連携までトータルでサポートしました。マーケティングとインサイドセールス、そして受注部門のデータをHubSpotで一元管理。リソース不足を補いながら、わずか2年でMRRを5倍に伸ばすことに成功しています。
また製造業のお客様に対しては、営業担当の利便性を高めるためにSFAのUI改善を行いました。月別・商品別の売上予測など、膨大な入力項目を抱える業界特有の課題を解決するため、使い慣れたExcelライクな画面設計を実装。バックエンドでデータ集計と連携させることで、業務とシステムのギャップを埋めています。
大手企業様へのABM支援では、ターゲット企業の組織構造を把握し、意思決定者へのアプローチを強化しました。市場分析を通じて獲得すべき案件を明確化し、コンテンツ企画やヒアリング設計など多面的なサポートを展開。潜在顧客の掘り起こしにつながるブランドアクティベーションも実施しています。
ほかにも、パートナー企業とのリレーション強化に向けたPRM活用など、幅広いニーズにお応えしています。パートナー担当との人同士のつながり以上に、組織的なアプローチが求められる中で、体系的なデータ管理とコミュニケーション設計により、テックタッチ・ハイタッチ・ロータッチと切り分けて効率的なパートナーアプローチを実現しています。
白石 いずれのプロジェクトにおいても、お客様のビジネスをヒアリングしながら、ダッシュボードやパイプラインの設計から実装までをワンストップで担うことでプロジェクト完遂と新たな課題の発掘と解決策の立案といった営業DXの推進スキームを確立できました。データや組織の分断、ツールの定着に悩むお客様の負担を軽減し、スピーディーな課題解決を実現するのが私たちの役割だと考えています。
知見を横展開し、お客様起点の提案を追求
コンサルとITの連携も欠かせない
──さまざまな事例をお聞きしましたが、なぜこのように多様なお客様の課題を解決することが可能なのでしょうか?
藤井 オートクチュールで進めてきた1つひとつのプロジェクトから得た知見を横展開し、事例化・商材化することに力を入れています。それをマーケティングやHubSpotへのフィードバックに活かすことで、ニーズに合わせた提案ができるようになります。スピード感を持って実行し、その中で得た教訓をナレッジ化していく。個人の経験に頼るのではなく、組織としての財産にしていくことが重要なのです。
また、クリエイティブホープという社名からもわかるとおり論理的な答えの提示だけでなく、そこから発想するその企業ならではクリエイティブな答えの提案を大事にしています。そのためにお客様と接点を持つコンサルタントと実際に機能を開発するITエンジニアの連携も深いですね。
HubSpot活用サービスとして開発した「キャラクターを用いた診断コンテンツ」を製造業の企業様に利用いただけました。デジタルマーケティングにおける顧客課題の分類に活かすだけでなく、展示会のノベルティとしてもご活用いただけました。
白石 課題解決に向けてお客様とコミュニケーションすると、課題そのものが整理できていないケースもよくあります。表面的な問題でなく、深層にあるシステムや組織、ノウハウの課題を紐解いていくことで、真の解決策が見えてくるのです。
──なるほど。今後の御社のチャレンジについて教えてください。
藤井 マーケティングカルチャーを育める立場でありたいと考えています。DXが進むほどデータ量は増え、それをいかに活用し、ナレッジにしていくかが重要になります。それらは放置すれば、あっという間に使えなくなってしまう。ナレッジマネジメント、パートナーマネジメント、チームマネジメントの基盤をつくることで、営業・マーケティングの質的向上を目指します。
白石 DXを進めると、ノウハウをつくる人と、それを活用する人の両方が欠かせません。ナレッジワーカーがいかに活き活きと働けるかが、組織のパフォーマンスを左右するのです。
だからこそ、データだけでなくコンテンツなどのアセットを整理し、AIを活用しながら収集・要約・レコメンドできる仕組みを提供していきたい。社員のオンボーディングや定着率の向上にもつながると考えています。
──最後に、営業DXを目指すリーダーへのメッセージをお願いします。
藤井 大きな決断と、その後の小さな改善の積み重ねが大切だと思います。定量化できることはすべて行っていく一方で、施策を積み上げた先にどんなインパクトがあるのかを見据えることが重要です。スピード感も大事ですね。
営業やマーケティングにおいて、トップの方だけがストーリーを語れれば良いわけではありませんし、事例もそのひとつの手段にすぎません。ストーリーを言語化し、チーム全体で共有することに力を注いでください。そしてナレッジワーカーが活き活きと働ける環境をつくり、実績につなげることを意識してください。
白石 ツールを使うこと自体が目的化しないよう、何のためにどのような活動をするのかを見失わないでほしいですね。変革へのマインドを保ち続けることが、これからのリーダーに求められる資質だと考えています。
──ありがとうございました!