連携前提ではない膨大なデータをどう活かすか
「顧客、そして自社の営業に愛されるマーケティング活動」を実現するために着手したのが、名刺管理システムに登録された方への挨拶メールだ。ファーストコンタクトで課題感をヒアリングし、回答してもらえない場合にも職種や業種といった情報から課題感を仮設定することで、以後の営業活動を的確なものにすることを狙いとした。
この課題感を元にインサイドセールスが架電する。設定が合っていれば課題に即したソリューションの提案を、間違っていればその情報を次に活かすべく蓄積することを繰り返した結果、セッションタイトルにも掲げた「売上6倍」を実現。しかし当然ながらこの成果もかんたんに手に入ったものではなく、デジタルとアナログそれぞれに苦労するポイントがあったという。
まずデジタル面で苦戦したのが、名刺管理システムに登録された人々がどのような課題を持っているのか、機械学習で分析するためのデータ収集だ。データ分析は一般的に、取り込むデータ量が多いほどPDCAの精度は上がる。事業規模の大きいパーソルHDはデータ量には事欠かず、この点では非常に有利なはずだった。
しかし膨大なデータのすべてが、連携する前提で収集されているわけではない。データ分析の際の“あるある”とも言える壁だが、ぶつけるキーがない、データの粒度が違う、そもそもどこから持ってきたデータかわからないなど、うまく使おうにも使えない状態のデータが大量にある状況に直面した。
パーソルHDがこの状況を打破するために導入したのが、Treasure Data CDP for Salesだ。統合データ基盤の構築により、社内に散在するデータを集約し、その中できちんと形成されたデータを必要に応じて引き出し、正しいかたちで使える状態を実現した。
繁田氏は当初、自社の課題に対しトレジャーデータのプロダクトは“Too Much”なのではないかと思っていたという。しかし日進月歩の領域において1~2年後の顧客ニーズを予測することは難しい。今見えている景色だけでシステムを設計してはいけないと考えたこと、またグループ内からの「こういうことはできないんですか?」という要望に安易にNOと言いたくないという思いから、Treasure Data CDP for Salesの導入を決めた。
その結果、先述のメールマーケティングによるアポイントの数は前年比173%にアップした。そもそも多大な労力を要するデータ基盤構築業務と、最大の目的であったデータ整備が実現したことに加え、データを取り扱う際のセキュリティ問題をクリアできた点も、Treasure Data CDP for Sales導入のメリットとして挙げている。なおデータ基盤構築に際しては、グループ会社でありトレジャーデータ公式パートナーのパーソルプロセス&テクノロジーが後ろ支えした。
営業への地道なヒアリングを起点に、受注率155%へ
アナログ面では、数だけでなく品質の高いアポを渡すために、各事業会社の営業担当者にヒアリングを実施した。同社は持ち株会社であることから、ともすると事業会社の営業同士に距離感が生まれてしまうため、とにかく地道なヒアリングに注力したという。この過程では「どのようなアポが供給されると嬉しいかのヒアリング」「実際にアポを供給」「そのアポがどうだったかフィードバックをもらう」という3ステップを繰り返し、SFAのデータからは見えないリアルな声を集めた。
これらの施策により受注率は155%を達成し、2021年は前年比602%増を実現、この結果を持って「NIKKEI BtoBマーケティングアワード 2021」の大賞を受賞した。アナログ施策においては、ヒアリングをする姿を通して法人マーケティングチームの取り組みが営業組織に伝わり、フィードバックへの協力を得られやすくなるという好循環も生まれているという。最後に繁田氏は次のように述べ、セッションを締めくくった。
「CDP導入で苦労したことも多々ありましたが、トレジャーデータさん、そしてグループ会社のパーソルプロセス&テクノロジーにも下支えしてもらってこのような成果を出すことができました。デジタルとアナログ、双方の力を活かすことで今までにない世界へ行くことができると実感していますので、検討中の方はぜひこの2社にご相談いただければと思います」(繁田氏)
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