グループ間のシナジー創出 HDならではの挑戦
パーソルHDがCDPを構築するためにタッグを組んだのが、トレジャーデータだ。トレジャーデータはグローバルにオフィスを構え、現在、国内外450社を超えるさまざまな業種・業態の企業にソリューションを提供している。昨今CDPを導入して社内に散在する顧客情報の一元管理に取り組む企業が増えているが、トレジャーデータは先日、これをBtoBの営業活動に活用するTreasure Data CDP for Salesをリリースした。ここからは、パーソルHDがTreasure Data CDP for Salesを活用して「売上6倍」の成果を上げた経緯をご紹介する。
パーソルHDは「はたらいて、笑おう。」のグループビジョンのもと、人材派遣サービスからITアウトソーシング、設計開発まで、人と組織に関わるソリューションを幅広く取り扱う。その数はグループ全体で100〜200規模にのぼり、これらのシナジーを創出しながらBtoBマーケティングを展開していくことを目指している。
その中で繁田氏が所属する法人マーケティングのミッションは、パーソルグループとしてのBtoBマーケティング活動を通じてグループの売上・利益を向上させるとともに、個人および企業にとっての「はたらいて、笑おう。」を最大化することにある。具体的には、ホールディングス起点でのBtoBマーケティング活動と、グループ会社のBtoBマーケティング活動支援というふたつの取り組みを軸とする。前者は、グループ全体でお客様のニーズに応じたタッチポイントを捉えながら営業活動を展開する役割、後者は、BtoBマーケティングの立ち上げ間もないグループ会社に伴走する役割だ。
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コロナ禍以降"愛されるマーケティング活動"に立ち返る
規模の大きい同社では、各事業会社で営業担当者が日々集める名刺が数百万の情報として名刺管理システムに収まるが、この顧客基盤を活かしてプロダクト横断的にマーケティング活動を展開することを目指した。たとえば、派遣の事業で集めた名刺に対して中途採用の案内をしたり、人事部長を抽出して営業研修の案内をしたり、総務部の役職者を抽出してファシリティのご案内をしたりといったイメージだ。こうした情報の連携を持ってインサイドセールスに取り組み、獲得した商談を各事業会社の営業に渡すことによって、シナジーを生みながら顧客の真のニーズに応えることができると考えた。
この構想は2018年からスタートし、2019年に本格始動した。ところが2020年4月7日に緊急事態宣言が出され、2019年上期を100とすると、下期には280に伸びた売上が2020年上期には196にまで落ち込んだ。緊急事態宣言によって外出できなくなり、メールによるコミュニケーションの総量が増大したうえ、企業の固定電話に電話をしても見込み客が出社をしていないなどの事情から、マーケティングファネル全体が細ってしまう現象が起きたからだ。
世の中全体が厳しい中でパーソルHDがどうあるべきかを考えた結果、同社は「顧客、そして自社の営業に愛されるマーケティング活動」を考えることに立ち返った。この「愛される」というキーワードを、繁田氏は「困っている方に、適切なものを、適切なタイミングでお届けし、そのために無駄のない連携を実現すること」と定義する。ここには、過去の営業活動で苦労した繁田氏自身の経験から、プロダクトありきの営業活動を脱却することで、次の世代の人たちにこの仕事を選んでもらいたいという思いもあった。
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連携前提ではない膨大なデータをどう活かすか
「顧客、そして自社の営業に愛されるマーケティング活動」を実現するために着手したのが、名刺管理システムに登録された方への挨拶メールだ。ファーストコンタクトで課題感をヒアリングし、回答してもらえない場合にも職種や業種といった情報から課題感を仮設定することで、以後の営業活動を的確なものにすることを狙いとした。
この課題感を元にインサイドセールスが架電する。設定が合っていれば課題に即したソリューションの提案を、間違っていればその情報を次に活かすべく蓄積することを繰り返した結果、セッションタイトルにも掲げた「売上6倍」を実現。しかし当然ながらこの成果もかんたんに手に入ったものではなく、デジタルとアナログそれぞれに苦労するポイントがあったという。
まずデジタル面で苦戦したのが、名刺管理システムに登録された人々がどのような課題を持っているのか、機械学習で分析するためのデータ収集だ。データ分析は一般的に、取り込むデータ量が多いほどPDCAの精度は上がる。事業規模の大きいパーソルHDはデータ量には事欠かず、この点では非常に有利なはずだった。
しかし膨大なデータのすべてが、連携する前提で収集されているわけではない。データ分析の際の“あるある”とも言える壁だが、ぶつけるキーがない、データの粒度が違う、そもそもどこから持ってきたデータかわからないなど、うまく使おうにも使えない状態のデータが大量にある状況に直面した。
パーソルHDがこの状況を打破するために導入したのが、Treasure Data CDP for Salesだ。統合データ基盤の構築により、社内に散在するデータを集約し、その中できちんと形成されたデータを必要に応じて引き出し、正しいかたちで使える状態を実現した。
繁田氏は当初、自社の課題に対しトレジャーデータのプロダクトは“Too Much”なのではないかと思っていたという。しかし日進月歩の領域において1~2年後の顧客ニーズを予測することは難しい。今見えている景色だけでシステムを設計してはいけないと考えたこと、またグループ内からの「こういうことはできないんですか?」という要望に安易にNOと言いたくないという思いから、Treasure Data CDP for Salesの導入を決めた。
その結果、先述のメールマーケティングによるアポイントの数は前年比173%にアップした。そもそも多大な労力を要するデータ基盤構築業務と、最大の目的であったデータ整備が実現したことに加え、データを取り扱う際のセキュリティ問題をクリアできた点も、Treasure Data CDP for Sales導入のメリットとして挙げている。なおデータ基盤構築に際しては、グループ会社でありトレジャーデータ公式パートナーのパーソルプロセス&テクノロジーが後ろ支えした。
営業への地道なヒアリングを起点に、受注率155%へ
アナログ面では、数だけでなく品質の高いアポを渡すために、各事業会社の営業担当者にヒアリングを実施した。同社は持ち株会社であることから、ともすると事業会社の営業同士に距離感が生まれてしまうため、とにかく地道なヒアリングに注力したという。この過程では「どのようなアポが供給されると嬉しいかのヒアリング」「実際にアポを供給」「そのアポがどうだったかフィードバックをもらう」という3ステップを繰り返し、SFAのデータからは見えないリアルな声を集めた。
これらの施策により受注率は155%を達成し、2021年は前年比602%増を実現、この結果を持って「NIKKEI BtoBマーケティングアワード 2021」の大賞を受賞した。アナログ施策においては、ヒアリングをする姿を通して法人マーケティングチームの取り組みが営業組織に伝わり、フィードバックへの協力を得られやすくなるという好循環も生まれているという。最後に繁田氏は次のように述べ、セッションを締めくくった。
「CDP導入で苦労したことも多々ありましたが、トレジャーデータさん、そしてグループ会社のパーソルプロセス&テクノロジーにも下支えしてもらってこのような成果を出すことができました。デジタルとアナログ、双方の力を活かすことで今までにない世界へ行くことができると実感していますので、検討中の方はぜひこの2社にご相談いただければと思います」(繁田氏)
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