機能説明の前に「プロジェクトの進め方」をガイドする
高橋(HiCustomer) まずは北川さんのキャリアをお聞かせいただけますでしょうか。
北川(セールスフォース・ジャパン) 新卒はオラクルでERPのプリセールスを担当し、実態としてはポストセールスまでカバーしていました。面白さを感じていましたが、より人の変化にフォーカスした業務に関わりたいと思い、人事に異動して新入社員のトレーナーや社内研修のコーディネートも担当しました。
その後友人が創業したベンチャーを経て、2008年にセールスフォース・ジャパンに入社します。当時はまだ耳慣れなかったカスタマーサクセスを提唱していたのが印象的で、オラクルでポストセールスに面白さを感じていたこともあり、その領域で評価されるのは良いなと思ったことを覚えています。ただし当時は、現在と比較すると確立された手法はまだなく、要望があるお客様を訪問し支援することからのスタートでした。
高橋 現在のカスタマーサクセス部門は、どのような体制になっていますか。
北川 大きくふたつの組織体があります。比較的大規模なお客様を個別に支援するハイタッチの「サクセスマネージャーチーム」と、それ以外のお客様を支援するロータッチの「サクセスガイドチーム」です。さらにハイタッチは5つの業種別に、ロータッチはオンボーディングなどのプログラム別に細分化されます。Salesforce製品の導入はプロフェッショナルであるパートナー企業にお任せする部分も多く、導入後の定着や効果を出すための活用支援にフォーカスするのが、私たちの役割です。
高橋 関連プロダクトも含めて製品が多様化する中で、コンサンプションギャップ、つまり製品の機能にユーザー側の使いこなす力が追いつかない課題も少なからずあると思います。これに対し、どんな工夫をされていますか。
北川 オンボーディングではまずお客様側でSalesforce製品の活用目的を決めてもらい、何がどうなったら達成とみなすかを定量化してもらいます。しっかり体制をつくってもらったうえで、それをベースにどうやって使っていくかの運用ルールを、私たちも一緒になって決めていく流れです。機能の話をする前に、プロジェクトの進め方そのものをガイドするようなイメージですね。
高橋 「どんな機能で何ができるか」と「使える状態にしていく」のは別の話ということでしょうか。
北川 そうですね。ただ、達成したいゴールや運用のあり方から逆算して必要な機能の話になり、その機能を学ぶことになりますから、最終的には両者はつながるものだと考えています。
また、ノーコード(マウス操作だけ)でもかなりの設定が行えますから、IT初心者の方でも基本的な事項を学んでいただければ、自社に必要な設定を自力で行うことができるのも、お客様が自走できる要因のひとつになっていると思います。実際、文系出身の新卒の方や、社会人経験30年でシステムとはまったく縁のなかった方でも自社の仕組みをSalesforceのプラットフォーム上でつくり上げ、日々使いやすく改善を重ねられています。