インサイドセールス担当者はたったひとりだった
──パイオニアで現在のインサイドセールス組織が立ち上がるまでの経緯を教えてください。
石戸 当社のインサイドセールスはマーケティングチームに所属しています。フィールド・デジタルマーケティングを通じて興味を持っていただいた方々に対して、商談をフィールドセールスにトスする役割を担っています。
とはいえ、かつてはコーポレートサイトや代理店経由での引き合い案件は法人営業が対応していくスタイルで、インサイドセールス組織はいわば「問い合わせを整理する」役回りでした。
しかし、業績目標が高くなり、単なる問い合わせ対応だけでは数字が見込めない中で、営業のアポが不足する事態が続きました。インサイドセールスの担当者が1名しかおらず、顧客からの問い合わせから見込み客の対応までを捌ききれずにボトルネックとなってしまっていたのです。
そうした状況の中、私が2020年4月にCDO(Chief Digital Officer)として入社し、2021年4月にはマーケティング領域も任されるようになりました。入社直後にマーケからセールスまでのフローを調べたところ、インサイドセールスを効率化・強化することで売上が伸長できることを確信し、インサイドセールスの整備をスタートしたかたちです。
社長からプレイヤーまでが3階層の新興組織
石戸 パイオニアは従業員数1万1,000人の大企業ですが、大きくふたつのセクションに分かれています。ひとつは従来のカーナビなどを開発してきたモビリティプロダクトを販売する部門で、売上の9割近くを占めています。
一方、我々は「モビリティサービスカンパニー」という新たなサービスを提供する部門に所属しています。ドライブレコーダーと管理サービスを組み合わせた「ビークルアシスト」というSaaSを主力製品とし、メンバー数は100人程度――売上は全体の1割程度と規模が小さく、いわば社内ベンチャーのような風土です。私の直属組織では、2021年はあえて中間管理職を配置せず、社長の下に部長である私がおり、その部下としてインサイドセールスが在籍しています(2022年1月より組織変更有り)。こうしたトップからプレイヤーまでが3階層しかない組織体制は特徴的で、大企業の中でもベンチャー企業のような意思決定や実行のスピードが高い組織として認識いただければと思います。
我々が扱うSaaS商材は、従来のパイオニア製品のような認知度もなく商流も異なるため、当時社内の主流であったプル型の営業スタイルから、プッシュ型のアウトバウンド営業への転換が求められました。こうした現状を説明したうえで、インサイドセールス強化の必要性を経営陣に伝え、実行に移していったのです。