営業の「前工程」「後工程」を意識した組織づくり
前編「オンライン商談で『成果が上がっていない』は9割以上 真の営業力を高めるのは顧客軸の組織デザイン」はこちらから。後編からでもお楽しみいただけます。
コロナ禍の影響で、顧客を中心としたプロセス設計・組織設計を変革する重要性、およびKPIを再設計する必要性が認知され始めているように感じます。それでは、こうしたプロセスを実際に設計していくためには、どのような組織設計が必要なのか。そしてどのような事柄に着手していくべきなのか。これらをいくつかの事例を交えて解説していきます。
チーフレベニューオフィサー(CRO)という言葉をご存知でしょうか? カスタマーセントリックな組織設計を行っていく際、CROがどのような役割を果たすのかを紐解いていきます。今回は、過去に我々が支援してきた複数の企業さまの事例から要素を抜き出してひとつのケーススタディとしてご紹介します。
とある老舗のSIerさんでは、国内の成長率は年数%と勢いが鈍化してきていました。営業には明確にテリトリーが割り振られているため、部分最適化が非常に進んでおり、組織が分断されていたのです。組織のカルチャーとしては、新卒からそのまま年次を重ねていく社員が非常に多いため、「ナレッジを共有する」文化がなく、業務のノウハウは属人化してしまっている状態です。こうした状況下にある会社さんに対して、「売上向上を目的とした、顧客中心の組織設計への転換」を支援したプロジェクトでした。
それでは、実際にどのようなことをしたのか、変更前と変更後を示す図を用意しました。左は「一般的な組織」、右は「人材育成の機能を営業にすべて寄せる」かたちで再設計が行われた組織図です。具体的には、CRO(責任者)を置き、その下に営業戦略チーム――営業企画、営業戦略を練るチーム、カスタマーコミュニケーションチーム、フィールドセールスチーム、ソリューション営業、セールス・イネーブルメント的役割の組織を紐づけています。
特徴的なのは、「カスタマーコミュニケーション」「セールス・イネーブルメント」のチームではないかと思います。パイプラインやリードをつくるセールスマーケティングチーム、定着支援や問い合わせ対応に従事するカスタマーコミュニケーションチームを配置し、営業組織に紐づけるかたちで「前工程」「後工程」を意識した組織づくりを行いました。人を集めてきて、顧客対応をメインに担うチームを作り上げていく、組織改編を行っていきましたね。
ここまで利点を多く語ってきましたが、いきなり「大成功」するほど甘くはなく、さまざまな苦労が降りかかりました。新しい取り組みに着手するうえでは、多くの場合「抵抗勢力」が存在していることかと思います。いかにして、これらを打破していくかが成功のカギを握っています。
このプロジェクトで重視していたのは「コミュニケーション」と「オンボーディング」でした。まず、コミュニケーションとは、「『誰』に『どのような』メッセージを伝えて行動変容を促していくのか」で、オンボーディングは「そうして届けられたメッセージが、正しく受け取られ、また、正しい行動の変容が促されていること」を指します。
プロジェクトを推進していくするにあたって、我々もペルソナをつくっていきました。新しい施策に取り組む際は5つほどペルソナを定めていくのですが、今回のケースでは「反対する人」「知らんぷりする人」「決めかねている人」「支持する人」「賛同する人」と設定しました。スタートの段階から、これらすべてのペルソナへ一律にメッセージを届け、全員に行動変容を促すことの難易度の高さは認識していたため、「誰にメッセージを届けるべきなのか」、そして「誰に変わってほしいのか」を初期の段階で明確化させました。
具体的には、横軸にペルソナを、縦軸に営業の成績を置きました。全部で5つのゾーンに切り分けたのですが、今回対象としたのは、営業職の約半数を占めたこの黄色い部分です。