オンライン営業の推進を阻む要因は営業組織の「慣性」に
新型コロナウイルス感染症の流行は対面での業務を主とする営業組織に甚大な影響を与えました。かつて経験したことのない、リモートでの営業を余技なくされた組織も多いことでしょう。5月に厚生労働省が提示した「新しい働き方のスタイル」の中には、「テレワークやローテーション勤務」「会議はオンライン」なども掲げられています(参照:厚生労働省ホームページ「『新しい生活様式』の実践例」)。 営業組織についても例外ではなく、コロナ禍の収束が不透明な中、これまでの対面接触を前提とした活動を見直さざるを得ない機運が高まりました。
これまでも、生産性向上の文脈からリモート営業を目指す動きがありましたが、広く普及・浸透するまでには至りませんでした。これにはふたつの要因があります。第一に、営業組織の生産性(業績/投資時間・労力)がブラックボックスになりやすいことです。製造ラインと異なり、同じアクションでも営業担当や商談相手により得られる結果が異なるため、生産性の分母となる投資した時間や労力に対する評価があいまいになり、結局は分子である業績で判断されやすいのです。
第二に、「顧客優先」の考えがあり、顧客側が対面を望めば、すぐにお伺いするという慣習があることです。コロナ禍は顧客側がリモートコミュニケーションを受容し、合理的な意思決定をすることを促進しています。一方、営業側は、過去の経験から「顧客は対面を望み、訪問することで熱意が伝わる」という思い込みを持っているケースが多くみられます。冒頭に述べた「対面に戻る組織」と「オンラインを進める組織」の二極化は、営業組織の慣性ともいえるこのふたつの要因を克服できるかどうかの分岐といっても過言ではありません。
筆者は対面での営業がある程度継続するものの、これまで顧客訪問や出張を繰り返してきた営業プロセスの多くはオンラインに切り替わると予測しています。現在では、営業活動も在宅で行われることが珍しくなくなりました。コミュニケーションツールやリモート業務の方法に慣れるにつれて、対面にはないオンラインの利便性に気づいてきたのです。業界や地域による浸透スピードの違いはあれ、営業のオンライン化は不可避の課題です。組織としての対応方法について説明をしていきます。