網羅的に顧客の課題を捉えられる地図を描いてみよう
そもそも「パースペクティブセリング」はなぜ求められているのか? 営業組織の変遷について知ることができる前編はこちらから。後編からでも楽しんでいただけます。
小林 プロダクトの特徴だけで勝負しづらい組織はどのように顧客に示唆を与える「パースペクティブセリング」を実行すべきでしょうか。
丸 その場合は、そもそもお客様がどんなことに悩んでいるかの仮説が必要で、組織的に仕掛けていく必要があります。たとえば、「病院」がお客様の場合こんな図で考えられると思います。
病院の中で起こることか外で起こることか(縦軸)、経営目線か患者目線か(横軸)。便宜上軸を分け、網羅的に課題を書き出してみたものです。たとえばマーケティングチームが営業に対して、病院という市場を攻めるための糸口として、このような図を提供します。各施設のことをよりよく知っているのは営業担当者ですから、「この部分を大切にしている会社だから、この課題をチョイスしよう」と選ぶのは営業組織の仕事です。
より深く課題を理解するためには、顧客の中期計画や現状を注視する必要があります。普段会う機会のある担当者だけでなく、他部門や経営に近い人と接触することで得られる情報は広く深くなりますから、ぜひチャレンジしてほしいです。営業ひとりでは気後れするかもしれませんが、こういうときこそマネージャーの出番です。
網羅した課題を解決できるソリューションやサービスをすべて持っていなくてもいいんです。このような視座・視点で対応してくれる「○○社の営業担当○○さん」になることで、「お客様の成功が先、モノを売ることが先ではない」という営業活動を体現できるようになります。だだ、この営業手法は目先の利益に直結しづらい、効率が良くないという課題もありますから、組織的に対応することでそれらの課題もクリアしていく必要があります。
パーソルラーニング株式会社 シニアコンサルタント 丸尚さん
1992年 富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソルラーニング)に新卒入社し、営業・営業課長・西日本支社長を経て、営業組織開発分野のコンサルタント業務に従事。営業成果創出を共に目指す仲間の一員として、6ヵ月~1年間にわたるロングスパンで関わる業務を中心に活動。インタビューや営業同行による現状把握・企画・開発・実行・レビューの全業務プロセスを終始一貫して担当し、営業畑に精通した強みを最大限に活かしたきめ細かい支援を信条としている。
小林 お客様と課題について考える場を持つことは、お客様のためになるのはもちろんですが、売り手側にとっても学習の機会になりますよね。商品やサービスだけに閉じない価値メッセージをつくることができるように足腰が鍛えられていきます。また網羅的に課題を洗い出すと、非常に広い視野を得られ、どのようなお客様とも対話できるようになります。営業組織が広い地図を持っておくことも大事なことです。
「価値メッセージ」をつくる際のヒントが4つあります。ひとつは、お客様にとって「未知な問題」を示唆すること。ふたつめは、「予期していないソリューション」、3つめが「見えない機会」、こんな市場で商売ができそう・こんなターゲット層にも価値を広げられそうという新たなビジネスチャンスです。4つめは、「総合力の駆使」、相対している営業担当者に任せれば、さまざまな課題が解決できるという期待を与えること。自社が提供できる価値はこれら4つのどれに近いかを考えると価値メッセージをつくりやすくなるはずです。