セールスプロセスとセールスコーチングはなぜ重要か?
小林 我々自身もセールスプロセスとテクノロジーの連動についてはまだ道半ばであり、いまはまず、顧客や営業活動の生データを貯める「データベース」をつくっている状況です。ここからもう一歩先へ行きたいし、お客様も同じ課題を持っていらっしゃいます。
野見山 セールスプロセスの構築がなぜ重要か。この土台がなく組織的サイロがある状態でツールを導入すると、運用を間違えるからです。私も営業支援時に経験があります。
セールスプロセスの定義がなされていない、支社が複数ある会社でCRMが導入されたときのことです。数字を確認した本社は、「〇〇営業所は活動量が少なく、売上がよくないのではないか」と支社を叱ります。支店長は慌てふためき、メンバーに「嘘でも良いから入力してくれ」なんて指示を出す。データの正確性は下がりますし、現場にとっては一気にやらされ感満載の管理ツールになりますよね。現場はツールが売上や活動をドライブするものだと理解すれば、有用性を感じてデータを正確に入力するものです。適切なフィードバックができるよう、セールスプロセスの構築を先に行う必要があるのです。
ただ自社のセールスプロセスをいざ構築しようとしても難しいですよね。ビジネスもお客様もマーケットも生き物で、100%の正解がない。自社のトップパフォーマーを集めてインタビューしても、それぞれ特徴のあることを言うでしょう。担当しているマーケットだからできること多いはずです。それでもそこから共通化したエッセンスを抜き出す必要がある。
日々の営業活動を見える化することは、共通化の第一歩になります。顧客からどんな情報を得ると、顧客に対してどんな行動をとると勝率が上がっているのか。他社の成功例を参考にするのも良いでしょう。CSOインサイトが提供しているようなワールドクラスの営業組織のエッセンスを踏まえれば、コンサルに頼むよりも安く早く進めることができるはずです。
Korn Ferry
Business Development Director
野見山 健一郎氏
ファイザー株式会社にて開業医及び病院担当MRを経験後、アイ・エム・エス・ジャパン株式会社(現 IQVIA ジャパン)にてKey Account Manager、新製品開発プロダクトマネージャー及びCommercial Effectiveness Service部門にて新規アウトソーシングビジネスの開発責任者に従事。その後市場調査会社グローバルデータ・ジャパン株式会社ヘルスケア事業部設立。現在コーン・フェリーでは「営業変革ソリューション」ミラー・ハイマングループビジネスの日本責任者として大手日本企業を中心に営業変革を支援している。
小林 ビジネスプロセスも内製しなくてはというプレッシャーが日本企業に強いのかもしれないですね。外部の専門家の力や、他社事例を借りながらスピード感を持ってセールスプロセスをつくる必要がありますね。セールスプロセスを作る際は、カスタマージャーニーつまり顧客の意思決定や行動プロセスに合わせておくことも重要です。
また営業の行動を変えていくひとつの方法として「セールスコーチング」があります。我々のお客様からも「コーチングは重要なのですよね、ぜひやりたいです」というお声をよくいただくのですが、「セールスコーチング」といわゆる一般的な「コーチング」は目指すところが違います。
セールスコーチングはパフォーマンスを上げるために、成功や失敗をどう活かすかに着目する、明確なゴールを持つコーチングです。質問を繰り返すだけではぼんやりとしたマネジメントになってしまいます。
野見山 傾聴と気づきを促すのが、コーチングの基本アプローチですが、小林さんが言うように、営業にはパフォーマンスを出すという明確なゴール設定があるので、お互いの理解を揃えてメンバーに質問をしていくことが必要ですね。
スポーツのコーチングと営業のコーチングは似ていると思っています。たとえばサッカーの場合ですが、監督やコーチには自分たちのチームが最大にパフォーマンスを出すための戦略がある。プレーの途中で動きを止めて、敵や仲間の位置を把握し、どんな選択肢がその瞬間にあるか気づかせる指導を普段から行っています。チーム共通の戦略に則ったベストなアクションに自ら気づく訓練を重ねることで、本番でピッチに出たとき個々人が瞬時に判断を下し勝つことができます。営業部も同じでまずは戦略とプロセスを共有し、すでにある情報と得られていない情報を揃え、いま何をすべきかと気づいてもらえるような質問をするのです。
繰り返しになりますが、戦略と方向性の共有が非常に重要です。どっちを向いて答えればいいのかわからない状態で質問を投げかけられ、正反対の回答をしてしまったメンバーの前で感情的な上長が机を叩きでもしようならば、建設的な場になりません。