パーソル総合研究所は、全国の20~69歳男女の就業者2万8,135人を対象に「職場のハラスメントに関する調査」を実施。その結果を発表した。
調査結果
2021年の1年間においてハラスメントを理由に離職した人を簡易推計したところ、約86.5万人となった。そのうち57.3万人が、退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられず暗数化。業種別では「宿泊業・飲食サービス業」(17.9万人)でハラスメントを理由とした退職者が多かった。
調査対象者である全就業者に対し、過去にハラスメントを受けた経験があるかたずねたところ、34.6%が「ある」と回答。また、過去5年以内にハラスメントの被害を経験した3,000人に対し、被害の実態についてたずねた。その結果、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)がもっとも多く、「乱暴な言葉遣いで命令・叱責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)と続いた。
被害者が受けたと認識したハラスメントに対して、会社側の対応の有無をたずねた。その結果、17.6%が「対応あり」と回答。「認知しておらず、対応なし」(45.2%)、「認知していたが、対応なし」(37.2%)の計82.4%が「未対応」と回答した。 ハラスメントに対する会社の具体的な対応をたずねたところ、「被害者の要望を聞いたり、相談にのってくれた」(40.8%)、「被害者に事実確認のためのヒアリングを行った」(40.2%)、「加害者に事実確認を行った」(38.1%)が上位にあがった。
ハラスメントに対する被害者自身の対応をたずねたところ、24.4%が「特に何もしなかった」と回答。周囲の人がハラスメントを目撃したあとの対応では「特に何もしなかった」(41.4%)がもっとも多く、「被害者の相談にのった/声をかけた」(40.7%)が続いた。
属人思考の風土が強い組織と、ハラスメント発生率や会社・被害者の対応との関係について調査した。「会議やミーティングでは、同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある」「トラブルが生じた場合、“原因が何か”よりも“誰の責任か”を優先する雰囲気がある」など属人思考の風土が強い組織では、ハラスメントが発生しやすい傾向が見られた。また、属人志向が高い組織では会社の対応率が低く、被害者が「相談しても無駄だろう」と予期する相談無力感も高くなった。
上司のマネジメントとハラスメントの関係について、上司側は「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)といったハラスメントを回避するような行動をとっていた。一方、上司との距離感と部下の成長実感について、上司との距離感が遠くなるほど、成長実感を得られていない傾向が見られた。