AIは全顧客へのVVIP対応を可能にする
──ガナパティさんは以前「AIはすべての顧客をVVIP(最重要顧客)のように扱うことを可能にする」とおっしゃっていました。その具体像を教えてください。
これまでは、コストの制約から「80:20の罠」に陥っていました。売上の80%を占める上位20%の顧客には優秀な人材を割り当てますが、残りの顧客、いわゆるロングテール(小規模な多数の顧客)は放置せざるを得ませんでした。最高の人材は人件費も高く、すべての顧客に対応させるのは経済的に不可能だったからです。

しかし、エージェント型AIはこの制約を取り払います。上位顧客には最高の人材が戦略的なパートナーとして寄り添う。一方でロングテール層の顧客には、最高の人材の思考や行動を学習したAIエージェントが、最高レベルのサポートを提供するからです。
──人間×デジタル×AIエージェントの融合ですね。
そのとおりです。エージェント型AIは、これまでテクノロジー企業がどうしても実現できなかった「すべての顧客をVVIPとして扱う」という理想を、現実的なコストで叶えてくれます。これがCSにおける真の価値であり、顧客体験のあり方を根本から変える力になるはずです。
日本市場の解約率の低さは“おもてなし”文化の賜物
──グローバルの先進企業と比較して、日本企業のCS組織の現在地をどう見ていますか?
日本には「おもてなし」という素晴らしい文化があります。顧客に対して非常に手厚い対応を行い、体験価値を向上させようとする姿勢は、日本の企業を特別な存在にしています。その結果、他国に比べて顧客の解約率が低く抑えられているのは大きな強みです。
一方で、変革の余地も感じています。日本ではまだ、CSをカスタマーサポートの延長として捉えている企業が多いようです。これを「レベニュー(収益創出)のファンクション」へと進化させなければなりません。
──サポートではなく収益を生む組織へ。具体的にはどのような変化が必要でしょうか。
「オンボーディング(導入支援)が順調だから成功」という考えに留まらず「その顧客に他にどのような製品や価値を届けられるか」という視点を持つことです。
CSMが営業担当者になる必要はありません。しかし、顧客との深い関係性の中からアップセルやクロスセルの機会を特定し、営業プロセスに組み込んでいく。この「収益に対する責任感」を持つことが、CS組織の地位を向上させ、経営への貢献を証明することにつながります。
「日本は北米や欧州に数年遅れている」と言われることもありますが、現在起きている変化への追いつきは非常に速いです。製造業のような伝統的な企業ですら、既存顧客との関係性をスケールさせるためにAIやコミュニティへの投資を始めています。日本の“おもてなし”の心にAIと収益戦略をかけ合わせれば、世界に類を見ない強力なCSモデルが生まれると確信しています。
