「数字を報告する時間」から「数字を考える時間」へ──AIが解放したマネジメントの創造性
──現場がデータの価値に気づき始めたというのは、素晴らしい変化ですね。そのほかの成果として、組織としての「意思決定のスピード」や、マネジメントにも変化があったそうですが、詳しくお聞かせください。
油野 営業部長という立場からすると、これまでの最大の課題は「会議のあり方」そのものにありました。かつては週に一度の営業会議のために、直近の変化を想定し、基幹システムから抽出した膨大なデータをExcelで一生懸命に整形して、グラフや報告資料を作成していました。
しかし、いざ会議の場で「なぜこの数字なのか」と上司や経営層から問われても、詳細な要因まではその場ですぐに分からず、「持ち帰って後日報告します」となる場面が少なからずあったのです。この情報のタイムラグが、組織全体のスピード感を鈍らせていました。
プラス株式会社 ステーショナリーカンパニー コーラス営業本部 EC営業部 部長 油野哲弥(ゆの・てつや)氏
そこで、私たちの部署では、TableauのAIアシスタント機能「Tableau Pulse」をいち早く取り入れ、会議の「中身」を根本から変える改革に乗り出しました。
現在活用している仕組みでは、AIが売上の異常値を自動で検知し、予測の範囲を超えて悪化した部分をパッとグラフ上で赤く強調してくれます。これにより、会議の準備時間は約50%削減されました。
しかし、私たちが実感している本質的な価値は、単なる「時短」ではありません。それは、準備に費やしていたエネルギーを、「要因の深掘り」と「次の一手の議論」に転換できるようになったことです。
AIに「今月の売上に何が起きたのか?」と自然な言葉で問いかければ、即座にデータの内容や傾向をテキストで説明してくれます。会議中に画面を共有しながら、クリックひとつで「Amazonでの売上の伸び」や「特定カテゴリーの月ずれ」といった要因をその場で突き止め、リアルタイムに結論を出せるようになりました。まさに「数字を報告する時間」から「数字を考える時間」への完全なシフトです。
──データの活用が、「現場の負荷削減」だけでなく、「マネジメントの質の向上」にも寄与しているのですね。
油野 はい。正直なところ、私は「もっと楽に集計作業ができたら」という気持ちからこのツールを使い始めましたが、その「楽」によって浮いた時間は、部下の育成や、よりクリエイティブな提案の壁打ちに充てることができます。
AIは単なる自動化ツールではありません。営業担当者が自分の頭で数字と対話し、能動的に次のアクションを決めるための、心強いパートナーだと感じています。
