「なんとなく」指示していないか
千葉(EY) 前編で今井さんがお話しされた「マネージャーが“レシピ”を言語化できていない」という課題は、まさにプロンプティング(生成AIに対して、望む答えを得るために「指示」を出すこと)の話ですよね。
目的の定義から具体的なプロセスまでを要素分解して、欲しい答えは何かを明確に言語化して指示を出す。これはAIに対しても、人に対する指示でも本質は変わりません。
よく「プロンプトがうまくつくれないからAIを使えない」という声を聞きますが、厳しい言い方をすれば、それはAIの問題ではなく、人が「正しい指示ができない」のが問題だと思うんですよ。
AIに正しい指示を出せない人は、部下に対しても「なんとなく」でしか指示を出せていないはずです。この「言語化リテラシー」を教育できるかどうかで、2026年には決定的な差が生まれるでしょう。皮肉な話ですが、会社がAIを導入する前に「シャドーAI」を使い倒し、自力で言語化能力を訓練した人材が、そのスキルを評価される時代になるかもしれません。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション パートナー 千葉 友範氏
大学院在籍中よりソフトウェアベンチャー立ち上げに参画後、大手総合系コンサルティングファーム勤務、IoTなどを手掛けるIT企業役員を経て現職。現在は専修大学大学院にて客員教授も務める。EYストラテジー・アンド・コンサルティングのカスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーションにて、ビジネス成長のドライバーとなる戦略策定(サービスデザイン)から顧客接点改革(マーケティング、営業、コンタクトセンター、カスタマーサクセスなど)の実現までを総合的に支援するチームのパートナーを務める。直近では、CROアジェンダのオファリングリーダーを務める。
AIが可能にする「ひとり対30人」の組織
茂野(ビズリーチ) マネージャーが「正しい指示」の壁を突破できれば、「Span of Control(統制範囲)」が変わると言われていますよね。
これまではどれだけ優秀なマネージャーでも、リソースの問題から、直属の部下は5~7人程度が限界と言われていました。しかし、AIをフル活用できるようになれば、マネージャーひとりで20~30人を管轄できる世界観に変わっていきます。組織階層が圧縮され、フラットになることで、意思決定のスピードも速くなる。組織は圧倒的に強くなっていきます。
一方で、懸念もあります。日系企業に「AIは脅威か」とたずねた調査では、Noという回答が過半数だったのです。
「日本企業はAIに抵抗感がない」と前向きにとらえることもできますが、私は少し危機感を覚えています。「今の自分の業務はAIでは変わらない」と、変化の大きさを過小評価しているのではないか、と。

