顧客に“会う前に負ける”時代、「CRM統合」が急務に
──購買活動が“With AI”になるなど、すでに変化は進んでいるように思います。2026年には、個人の業務に留まらない大きな変化も起こるのではないでしょうか。
増岡(HubSpot) まさに現実的な問題として起こっていますね。マーケティング領域では、AIの登場で「ゼロクリック時代」が到来すると言われています。AIによるサマリーで情報収集が完結するから、各社のサイトを訪問しなくなる。グローバルでは、検索したユーザーの60%が何もクリックせずに離脱すると言われています。
茂野(ビズリーチ) AIにサマライズしてもらうには、情報の信憑性や権威性が重要ですね。ますますコンテンツの“質”が問われる時代になる。
今井(セレブリックス) 根本的に、マーケティングは「買う意味をつくる」こと、営業は「買わない理由をなくす」ことがミッションです。しかし、AIのレコメンドで製品選定される現代では、マーケティングのコンテンツの質がそのまま「買わない理由」に直結してしまう。営業が「顧客と会う前に負ける時代」がやってきたと言えるでしょう。
そうした時代で勝ち続ける鍵は、AIにサマライズされる良質なコンテンツを、いかに継続して発信できるか。そのためには、現場の営業が持つ「一次情報」をマーケターと共有し、より多くの人が関心を持つ企画を立てなければなりません。
営業のことしか考えられない営業組織、マーケティングのことしか考えられないマーケティング組織は、もはや勝ち残れなくなるでしょう。
増岡(HubSpot) 同感です。買い手が求めるものを熟考し、適切なチャネルにコンテンツを提供する。そのためには、買い手がどの情報に触れ、何を感じたかという「コンテキスト(文脈)」をマーケティングから営業まで一貫して共有しなければなりません。これを実現する仕組みとして、コンテキストを理解するための一次情報をCRMに集約し、AIに学習させることが必要です。
HubSpot Japan Head of Sales 日本事業 営業統括責任者 増岡 怜治氏
2007年、日本NCR入社。(その後日本テラデータに転籍)主に百貨店・コンビニ、私鉄関係の大手企業を営業として担当。2013年、セールスフォース・ジャパンに入社。従業員数10万人規模、事業売上1兆円以上の大手製造業を複数社担当。その後、ECプラットフォーム製品の営業組織のマネジメントとBtoB向けサービスの日本展開に従事ののち、2021年より中小企業のDXを通じた企業変革をマネジメントとして支援。2025年よりHubSpot Japanに入社し、日本企業を営業責任者として担当。延べ数百社を超える企業のCRM・企業変革に紐づくDXの導入活用・成果創出を支援。
増岡(HubSpot) AIがこれほどもてはやされているのは、コンテキストを理解してくれるから。しかし、ネット上の一般的な情報だけでは差別化できません。商談ログに限らず、メールや電話、ウェブ会議といったすべての接点から一次情報を徹底的に集める必要があります。
千葉(EY) 一次情報は、マーケティングや営業に限らず、カスタマーサクセスや保守・サポートまで、すべての顧客接点にあります。とくに保守部門が持つ「アフターCRM」にこそ、マーケティング・営業活動に役立つ良い情報が眠っているんですよね。
しかし現状では、マーケティングはMA、営業はSFAと、部門ごとにツールも情報もサイロ化している。これらをひとつのプラットフォームに統合するのが理想的ですが、エンタープライズ企業にとってはビッグバンを起こすようなもの。現実的ではありません。
そこで、AIを使ってそれらの分断を乗り越えようという動きが2026年には加速すると考えています。この世界観を描ける企業かどうかで、大きな差が生まれるでしょう。
