“泥仕合”に足を踏み入れてしまう営業の特徴とは
営業スタッフとして誰もが経験することがある。それが、いわゆる“泥仕合”である。
商談内容のほとんどが“競合他社との醜い争い”。取り組んで気持ちの良いものではない。勝率が低いうえに、たとえ勝ってもリターンが低いといった不毛な戦いだ。

この泥仕合でもっとも厄介なのは“値引き合戦”である。安くすることでしか勝負できなくなった営業スタッフが、最終的に地獄に追い込まれていく。私自身も何度も経験したものだ。
泥仕合に足を踏み入れてしまう営業スタッフにはふたつの特徴がある。
ひとつは余裕がないということ。商談をしていて「このお客様に深入りしてはならない」と感じるものの、ほかに契約を見込めるお客様がいない。今月の契約がゼロなら、社内では苦しい立場になる。
こうなると泥仕合とわかっていても撤退ができない。
もうひとつは“価格でしか勝負できない”ということ。本来であれば次のような次のような力か必要になってくる。
- 要望を聞きとるヒアリング力
- お客様の要望を形にする提案力
- ボトルネックを解決するための問題解決力
などなど。
こうした力を磨く努力を放棄し「決めていただけるならこれだけ値引きします」と安易に値引きを提案してしまう。結果、他社も追随し、さらにこちらも値を下げる──という、終わりなき消耗戦に突入してしまうことに。
これで生き残る営業スタッフはほぼいない。
上司も巻き込む値引き、サービス、特典合戦の末……
ダメ営業スタッフ時代のこと。商談中のお客様から「今月中に決めるから、良い条件を出してほしい」と言われことかあった。
これはチャンスだ。会社から決裁を取り、大幅値引きをして勝負をかけた。良い条件を提示したのだから「これで決まるはずだ」と思っていた。
しかし、そんなに甘くはない。その場では決まらず“他社の見積もり待ち”になった。
数日後、お客様は「他社も同じ価格で出してきたうえに、追加サービスをつけてきましたよ。菊原さんのところはもっとサービスできますよね」と言ってきたのだ。
ここからが本当の地獄の始まりだった。
値引き合戦、サービス合戦、特典合戦……。営業の私だけでは判断がつかない。スタッフ、設計、積算、上司までも巻き込み、会社総出で対応することになった。それで決まればまだ良い。
最終的にはメールで「他社に決めました。いろいろありがとうございます」と短いお断りの文章が送られてきただけだった。心底ガッカリしたし、ほかの人に迷惑をかけたことを心から悔やんだ。
この商談でのいちばんの問題は「踏み込んではいけないとわかっていながら、泥沼から抜け出せなかった」こと。トップ営業スタッフはこういった泥仕合について“冷静な判断”ができる。