「できる営業」は、仮説思考で顧客と“共創”する
「仮説思考」と聞くと、戦略コンサルタントや経営企画といった職種に必要なものとイメージする方も多いかもしれません。しかし、実は営業現場こそ仮説思考が活きる領域なのです。
たとえば、商談の準備段階。使いまわしのテンプレート資料を準備するだけでなく、
- このお客様は今、何に困っているのか?
- どんな変化が起きているのか?
- なぜ私たちのソリューションが必要になるのか?
といった仮説を1社ごとに持って商談に臨むことで、一方通行の製品説明型営業から、対話を通じた共創型の商談へと進化していきます。
さらに、仮説思考は、戦略立案や案件レビューなど、社内におけるさまざまなシーンで大きな力を発揮します。
営業戦略の立案 × 仮説思考
過去のデータに加えて、今後の市場変化を見据えた仮説を立てる
案件レビュー × 仮説思考
案件の進捗確認だけでなく、停滞・失注・受注要因について、顧客の心理変化や社内の動きを仮説として読み解く
こうした思考の定着が、営業組織全体の「思考スピード」と「変化対応力」を飛躍的に高めてくれるのです。
仮説思考は「現状維持バイアス」を打ち破る

皆様の会社でも、「受注率を上げる営業研修の導入」「生産性をあげるセールステックツールの導入」「モチベーションをあげるインセンティブ制度の導入」など、何かしらの施策にすでに着手しているか、過去に実施済みかと思います。しかし、「期待していたような成果が出なかった」「時間がたったら元に戻ってしまった」といった問題がたびたび発生しているのも事実です。
実際、ある中堅SIerでは、「若手だけ集めて営業研修を何度か行ってみたものの、半年たったあとには、一部のトップ層を除き、研修で学んだことを誰もやらなくなっていってしまった」ということが起きました。
また、別のベンチャーコンサル企業は、「成約率が上がると言われて導入した各種ツールだが、いつの間にか誰も使わなくなり解約してしまった」という状況に陥ってしまいました。このようなエピソードは、規模・業種問わず、本当に多数の企業から聞かれる話です。
では、なぜ、営業組織の改革を期待して多額の費用を投入した各種施策が、現場に定着せず失敗に終わってしまうのでしょうか?
その理由のひとつに、「現状維持バイアス」というものがあります。
「今までこのやり方で成果が出ていたから」
「これを変えると混乱が起きるかもしれない」
「間違えたらどうしよう」
「失敗したくない」
──そんな思いが、知らず知らずのうちに現場のスピードと挑戦を鈍らせているのです。
実はここでも、仮説思考が突破口となります。
仮説を立てるという行為は、ある意味で「間違いを前提とした挑戦」です。「仮説が外れること」は失敗ではなく、次の一手の材料になります。この考え方が浸透すれば、組織全体が失敗を恐れず、小さな実験と改善を高速で回していくカルチャーへと変わっていきます。
実際、仮説思考が徹底的に浸透しているある外資系SaaS企業の営業組織では、PDCAのサイクルが圧倒的に早く回るようになり、競合より先に市場の変化に対応できる体質が生まれています。