SIerの企画職からSaaSのパートナービジネスへ──異色のキャリアが示す可能性
──まずは栗本さんのキャリアについてお聞かせください。
新卒でSIerへ入社し、同期100人の中で3名ほどしかいない企画職に配属されました。当時の仕事は、ベンダーから商材を調達し、付加価値を乗せてユーザーに提供するというビジネスモデルの中で、「どの商材を扱うか」「どういう販売戦略を立てるか」を考える立場でした。今で言えば、自分が向き合っているパートナー企業の反対側の立場ですね。
その後、自社で開発していたサービスをクラウドに載せ替えて市場展開するプロジェクトで商品企画を担当し、原価構造の見直しや市場展開における制度設計に携わりました。そして、そのサービスの拡販フェーズではプロダクトセールスとして活動し、最終的には役員と共に中期計画を策定する機会も得ました。
──マネーフォワードでパートナービジネスを担当することになったきっかけを教えてください。
前職でベンダーのアライアンス窓口を担当し、さらにSaaSの市場展開プロジェクトに関わる中で、パートナービジネスの可能性と課題が見えてきました。たとえば、ユニットエコノミクスのように将来的な価値を見据えて目の前の投資判断を行うような考え方は、SaaSの世界では当たり前なんです。一方で、伝統的な企業ではどちらかと言えば短期的な売上が重視される傾向が強く、SaaSの展開は得意としていない印象がありました。
そこで、SaaSの思考をしっかり持った会社で、パートナービジネスを極めたいという強い思いを持つようになりました。国内のSaaS企業を徹底的にリサーチする中で、マネーフォワードのパートナービジネスにとくに可能性を感じました。マルチプロダクトで複数ドメインを展開している点も魅力的でしたし、なにより自分の描くパートナービジネスの理想と重なったんです。そこで、マネーフォワードのパートナービジネス本部の門戸を叩き、幸いにも採用していただきました。
──栗本さんはパートナーセールスの重要性について、どのようにお考えですか。
パートナービジネスについて、よく「なぜ必要なのか」という質問をいただきます。さまざまな切り口での説明が可能なのですが、私なりの考えをお話しさせていただきますと、一言で表現すれば「成長の角度を変える」ためだと考えています。
パートナーセールスには、直販でリーチできないお客様へのアプローチや、自社の営業リソースを効率的に活用するといった側面があります。ただ、それ以上に重要なのは、パートナー企業との関係性の深さに応じて、異なるアプローチや組織体制を構築できる点です。
たとえば、取引初期のパートナー企業に対してはeラーニングや検証環境の提供といったテックタッチを中心に据え、取引が深まってきた企業には専任の担当者をアサインして密なコミュニケーションを図る。さらに戦略的なパートナーとなると、お互いの経営層も交えた定期的な協議の場を設けるなど、段階的にアプローチを変えていくことができます。
加えてパートナーセールスならではのおもしろさは、ひとりの担当者が複数のパートナー企業と協業できる点にあります。中には1社で数千名の営業部隊を持つような企業もあり、そういった大規模パートナーには、営業戦略の立案から、製品トレーニング、マーケティング施策の共同実施など、多面的なサポートを提供していきます。
また、中小規模のパートナー企業に対しては、オンラインでの情報提供や定期的なウェビナーの開催など、効率的なサポート体制を整えています。このようにひとりの担当者が、パートナー企業の規模や特性に応じて柔軟に対応方法を変えながら、より大きなビジネスを動かせるというダイナミクスがあるんです。