商談の「今」と「未来」を見通すふたつのダッシュボード
現在は営業部でも、各システムのデータをすべてDr.Sumへ集約し、それらを連結・加工してMotionBoardで表示している。小俣氏は、実際に営業部門で活用されているふたつのダッシュボードを紹介した。
ひとつが「有望(商談)一覧表」だ。登録されている商談を一覧化し、有望度をA、B、Cで評価・表示する。1画面で受注月、売上月、四半月など切り口を切り替えて確認できるうえに、このダッシュボードは1年後、2年後など、登録されている商談のすべてを見通すことができる。Excelで確認できたのは6ヵ月程度だが、数年がかりの大型案件を確認できるようになったのだ。
もうひとつが「商談管理」だ。営業現場の声をとりいれたこのダッシュボードは、当月の受注を目標とした「今まさに注力すべき商談」を集中的に管理することができる。
また、「MotionBoardの優れた点は、入力画面を柔軟に作成できること」だと小俣氏。とくに予算・決裁・課題・導入・競合のBANT-C情報は担当者ではなくマネージャーがチェックすることで、客観的な情報を蓄積している。受注確度の判断が容易になっただけでなく、有望度やスリップしそうな案件、月初との状況変化や商談発生からこれまでの進捗も確認できるようになった。
データの信頼性を高め、「作業時間減・売上増加」を同時実現
Dr.SumとMotionBoardの活用により新たに作成されたダッシュボードでは、商談の粗利益額・利益率も表示し、SFAに登録されている商談はすべて確認可能に。赤字商談、受注予定月など正しいデータを把握できるようになった。
加えて、ダッシュボード上にSFAのリンクを設置し、変更があれば即座にSFAへ反映できる設計にした。こうすることでデータの更新漏れがなくなり、システム上のデータに対する信頼が高まったことで、本社による再確認のフローが不要に。また、現在はMotionBoardを見ながらミーティングを行うため、Excelによる資料作成も廃止されている。
Dr.SumとMotionBoardの導入により、手元のExcel資料による属人的な売上・商談管理から、全員が同じデータを確認し、先々の粗利益まで見通して活動するデータドリブンな営業へとシフトしたのだ。
この取り組みによる定量的な成果として、都内の支店では、1年間で作業時間を5.5%削減しながら受注金額を7.4%増加させた。また特筆すべきは、売上が下がったコロナ禍においても粗利益を上げたことだ。Dr.SumとMotionBoardは2019年4月に導入し、2020年4月から本格運用を開始している。その直後にコロナウイルス感染拡大が本格化し、売上・粗利ともに10%以上下がった。売上回復には苦戦した一方で、粗利益は早期に前年比102%まで復活したのだ。
小俣氏は「コスト削減などほかの要因もあるが、MotionBoardで粗利益を可視化し、現状と目標までの乖離が明確になった点が成果につながった。それまで売上中心だった考えに利益という重要な視点が定着した」と言う。増収増益を実現した現在は、さらなる分析の追加と、さまざまな部署で集計業務の効率化を求めてDr.SumとMotionBoardの利用が開始されている。