物流業界の課題が山積する中で、2026年にCLOの設置が義務化
現在、物流業界はさまざまな課題を抱えている。連日ニュースでも取り上げられるように、ドライバーの働き方改革や人材不足、置き配、価格転嫁問題など、あらゆる業務課題への対応に追われている状況だが、あくまでそれらは氷山の一角に過ぎず、そのほかにも課題は山積している。たとえば、物流総合効率化法の改正により、一定規模以上の荷主企業にはCLO(Chief Logistics Officer:最高ロジスティクス責任者)の設置が義務づけられることとなり、多くの企業で今後新たな対応が求められることは一般にはほとんど知られていない。
「2024年の5月に法律が告示されているので、2025年5月から省令化されて義務化に向けたトライアル期間に入ります。1年間猶予期間を置いて、2026年5月には義務化されることになりますが、そうなると日本企業のおそらく3,000社ぐらいが対象になるでしょう」と、ロジスティード DXソリューション開発本部 サプライチェーンイノベーション部 部長 半澤康弘氏は影響度の大きさを説明する。
CLO=“物流”担当役員ではない。本質的な役割は「CSCO」
CLOは、本来企業にとって非常に重要なポジションであるが、日本の企業では重要視されておらず、現状ほとんど設置されていない。CLO設置には、現在の業界構造をつくり上げてきた物流関連企業経営層の意識改革を促す側面も強く、意義のある取り組みである。しかしCLOを日本流に表現すると“ロジスティクス=物流”の担当役員ということになり、物流という視点にとどまって考えてしまうと本質を見誤ると半澤氏は指摘する。
「海外ではあまりCLOという言い方はせず、CSCO(Chief Supply Chain Management Officer)と呼んでいます。つまり物流だけではなく、サプライチェーン全体を統括するポジションです。調達部門、工場部門、販売部門がそれぞれの目標を追いかけている状況で、全体最適化の目線で在庫のコントロールができていないと、あっという間にコストが上がってしまいます。そこで、各部門間のひずみを調整するのが各部門トップの上に立つCSCOです。欧米の大手リテーラーでは副社長レベルの権限を持っていて、CEOになる人の45%ぐらいがCSSO経験者という調査結果もあるほど重要なポジションです」(半澤氏)
サプライチェーンのデザインとモニタリングをセットで提供
そのような認識のもと、ロジスティードでは2019年から顧客のサプライチェーン最適化を支援する活動を行ってきたが、法整備を受けて今後はCLO/CSCOに対する提案やコンサルティングビジネスを強化していく構えである。具体的には、「①組織づくりを含めたサプライチェーンの計画・デザイン」と、その際の「②KPIやKGIのビジュアライズとモニタリング」のサービスをセットで提供していくという。
その際のサービス基盤が、デジタルを活用したサプライチェーン最適化サービス「SCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services)」である。調達から消費までのサプライチェーン上の情報をデジタル基盤で一元管理・可視化し、そこから分析・シミュレーションを加えて課題解決をサポートしていく。SCDOSの活用により同部門では、顧客のDXや業務改革入り口部分の支援から、大型委託案件の獲得までの成果につなげてきた。現在ロジスティードでは、グループ会社の人員を含めて約80人のメンバーが、デジタル人材としてSCDOSを活用したデータ可視化・分析を行っている。