掴みの本質「聞き手と話し手は誰か」に言及すること
今回から5回(予定)にわたり「伝わるプレゼンテーション」の本質をまとめたフレームワーク「InGrip」について連載する佐々木文平と申します。私は外資系のコンサルティング会社を経て、いまは営業組織の人材育成・組織開発を中心に仕事をしています。そのなかで、「ロジカル」に加えて「惹きつけられる」プレゼンの重要性を常々感じ、研究してきました。そうする内にまとまった「InGrip」のフレームワーク。連載第1回目の今回は、プレゼンの冒頭の「掴み」の本質である「Individuals」について述べます。
営業パーソンは、自社のサービス・商品の価値をお客様にプレゼンテーションする機会がもっとも多い職種です。同時に、いわゆる「プレゼンテーション」の言葉からイメージする、会議室の前方に立ち、プロジェクターに資料を映しながら大勢の前で話をする機会は少ないかもしれません。少人数で応対し、対話の中で商談をまとめていく機会のほうが多いかと思います。
それでも自社のサービス・商品を「伝わる」ように聞き手に投げかけるポイントは共通しており、「プレゼンテーション」の体系を身に着けておくと、さまざまな形式でのお客様とのコミュニケーションに役立ちます。
本連載では数々の「伝わる」プレゼンテーションの研究をもとにまとめた全体像を「InGrip」のフレームワークでご紹介します。
プレゼンテーションが「伝わる」ためには、本論がしっかりとしている、すなわちロジカルであることは重要です。数多くの書籍や出版され、研修も開催されていますし、本連載でも2回目にそのエッセンスをお伝えします。同時に「ロジカル」だけでは、聞き手を「引きつける」には不十分と感じている方も多いでしょう。
聴衆を「引きつける」鍵は、話しかたや立ち居振る舞いとともに「オープニング部」と「クロージング部」の組み立てにあります。
オープニング部、すなわち冒頭での「掴み」の重要性は多くの人が認識しているかと思います。ではどうすれば「上手く掴める」のでしょうか。その本質を表しているのがInGripの最初の”I”であり、Individuals(その人は誰か)に言及することです。綴りの末尾に”s”がついて複数形になっていますが、これは「聴衆が誰か」と「話し手が誰か」の両側に言及すべきことを意味しています。