「イメージ」を伝えるための、ふたつの軸
私はこれまでさまざまな業界の営業力強化支援に携わってきましたが、業界を問わずに共通して、トップ営業の方々が重要性を強調し、逆にまだ一人前に至っていない方々からはあまり重要との認識が聞こえてこない言葉に、「我々の商品/サービスを購入することの、夢を膨らませていただく」があります。
お客様の課題を理解し、商品/サービスが役立つと論理的に伝えることに加えて、思わずそれが欲しい/必要だと直感で感じていただけるよう、商品/サービス購入後の姿のイメージを持ってもらうことが、お客様の決断のあと押しになります。
これはプレゼンテーションが「購入」をゴールとしていない場合も同様に重要です。プレゼンテーション(≠発表)とは、聞き手に話し手が期待する行動をとってもらうために行うものですが、プレゼンテーションでの「提言」を実施したあとのイメージが膨らむと、聞き手は行動をとりやすくなります。
それではどのようにすれば聞き手に鮮明なイメージを持ってもらえるのでしょうか。さまざまな実例をもとにまとめたのが、以下のイメージ・マトリクスです。
まず縦軸について。ここまで、「購入後/提言実施後」のイメージと書いてきましたが、「後」とともに、現在持っている「課題」のイメージ鮮明化も大切であることがわかり、両者を切り分けました。横軸は、イメージの描述が大きく「聴覚映像」と「心理描写(代弁)」に分かれることを示しています。
「聴覚映像」とは、ここでは、言葉での描述を聞いたときに、該当場面の映像や聞こえてくる音などが頭の中に自然と浮かぶことを表しています。たとえばキング牧師のスピーチの一節を引用すると、理解しやすいかと思います。
I have a dream that one day, down in Alabama,
with its vicious racists, with its governor having his lips dripping with the words of interposition” and “nullification,
one day right there in Alabama, little black boys and black girls will be able to join hands with little white boys and white girls as sisters and brothers.
私には夢がある。いつの日にか、このアラバマ州でも、
悪意に満ちた人種差別主義者に牛耳られ、州知事が「(連邦政府の)干渉排除」や「(連邦法の)無効化」を主張している、このアラバマ州においてさえ
いつの日にか、黒人の小さな子どもたちが、白人の小さな子どもたちと、兄弟姉妹として手を取ることができるという夢だ。
「心理描写」は、聞き手の心情の代弁です。「そうそう」と聞き手が反応をしてくれると、その分だけ聞き手のなかでイメージが明確になっていますし、また話し手と聞き手の距離が縮まります。聞き手のなかで、まだ言葉にし切れていないことを、話し手が言葉で表すと、聞き手の話し手への信頼度はなお上がります。