The Model導入の目的は「顧客の成功のため」
そもそもThe Modelは、Salesforceで実践されている営業プロセスのひとつで、「ユーザーの成功とともに売上を拡大する仕組み」と定義されている。従来はひとりの営業担当者が行っていた、見込み顧客の発掘から育成、商談成約後のアフターフォローといった業務を、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの各部門で分業し連携することで、一貫した顧客対応をとれる体制の構築を目指している。
The Modelは、分業による業務効率化のほかに、顧客獲得の機会や利益の増加、現行営業プロセスの弱点の把握、トラブルへの素早い対応、柔軟な人員体制の構築、再アプローチの可視化なども実現可能にする。これらの利点が複合的に組み合わさり、The Modelは近年多くの企業で注目を集めているというわけだ。
ここで田代氏は「The Model型の営業プロセスを導入するそもそもの目的は、企業がメリットを享受するためではなく、顧客の成功のためであることを覚えておく必要がある」と強調する。この点を理解して運用しなければ、各部門が自身の成果を出すことだけを目的として動いてしまい、顧客の成功につながらず、継続受注が増えないという本末転倒な結果になりかねない。
田代氏は、The Model導入が失敗するケースについて次のように語る。
「The Modelを実現して成果を挙げるためには、プロセスとマネジメントが密接に結びつき、各部門が適切なタイミングでそれぞれの役割を果たし、一貫してつながっている必要があります。しかし、多くの場合、各人材のスキルが不足して十分に役割を果たしているとは言えないケースがほとんどです」(田代氏)
では、代表的な失敗要因とは何なのだろうか。さらに具体的に見ていこう。
The Model型組織の構築を阻む「4つの要因」とは?
サークレイスがSalesforceの導入支援やDXコンサルティングサービスを提供する際、顧客に共通する次の4つの事項があるという。
- 無駄なコストの発生
マーケティングからセールスまでのプロセスにおいて、成功につながる具体的な施策の分析や把握が不足しており、効果的な活動に対する適切なコストとリソースの投資が妨げられている。
- スキル不足
人材の不足やノウハウの共有が不足していることから、個人のスキルに依存する傾向が強まっており、組織全体のスキルセットの偏りが生じている。
- 生産性の低下
営業マネージャーが営業のマイクロマネジメントに追われ、戦略的な業務に十分な時間を割けていない状況に陥っている。同時に顧客対応にも多くの時間をとられているため、結果としてチームのパフォーマンス向上に必要な活動に対する支援が不足してしまう。
- マネジメント不足
管理者の不足、または管理が行われていても、適切なタイミングでのプロセスの可視化が行われておらず、具体的なアクションを促すマネジメントができていない。
上記を踏まえて、The Model型組織構築の失敗例には「分業できなかった場合」と「分業はできたが成果が出なかった場合」の2パターンがあると田代氏は言う。
「分業できなかった場合」のよくあるパターンは、営業部門が情報を開示せず、ブラックボックス化したり、新規開拓に取り組まなかったり、未受注の顧客の掘り起こしを行なわなかったりするケースだ。これは無駄なコストやスキル不足に分類される。
一方で「分業はできたが成果が出なかった場合」は、多くが営業プロセス全体を見通せる人が不在となっているケースだ。全体を見る人がいなければ、顧客の適切なタイミングでのアプローチや最適な対応方法がつかめない。これは、生産性の低下やマネジメント不足に起因する。
The Model型組織を構築するには、各部門がどこまでやるのが最適か、自社の状況やターゲット層、商材などに合わせて適切に設定していく必要がある。この役割分担ができていない場合も、成果につなげることは難しいだろう。
「分業はできたのに成果が出ない原因として、圧倒的に多いのが“戦略不足”です」と田代氏は続ける。では、The Modelの導入を成功に導くためにはどのような改革プロセスと戦略が必要なのか。次頁で4つのステップを見ていこう。