創立100年以上、老舗企業が挑むBtoB EC構築
柏木工機は1916年(大正5年)創立の機械工具商だ。100年を超える長い歴史の中で、業務の属人化や情報の点在が喫緊の課題となっていた。今後100年を見据えて新規事業の構築・既存顧客へのサービスレベル向上を実現するため、2018年から基幹システムとして「SAP Business ByDesign」を、そして2019年からは「SAP Commerce Cloud」を導入。またそれらのEC構築プロジェクトと並行して、さまざまな課題解決に取り組んできたと茂木氏は語る。
取り組みの内容は3つ。ひとつは「人間がやらなくていいことは仕組みに置き換える」こと。ふたつめが、既存業務を可視化・一元化・効率化すること。そして最後が、生み出された時間を新しい事業の構築や顧客満足度の向上に充て「企業改革」を実現することだ。
茂木氏が入社した2019年は電話とFAXがひっきりなしに鳴り、業務のことを質問したくても20時まで誰も手が空かない状態。おまけに、書類が山のように積み上がっていたという。
「早く組織が成長するための土台をつくらなくては」と感じた茂木氏。まずは業務の「As is」「To be」やデータの整備・一元化を行い、ECに置き換えられる業務を選別して優先順位を明確にした。EC構築と同時並行かつ手探りで進めざるを得ない状況では、アジャイル開発が非常に適していたと茂木氏は語る。少数のクライアントからクローズサイトの提供を始め、トライ&エラーで機能定義とデータ整備を愚直に繰り返した。
プロジェクト開始当初は社内の反発も大きかった。「ECなんて誰も使わない」「こんなことしても意味がない」という声を受けた茂木氏は、自ら現場に入り、泥臭く取り組む姿を見せた。そして可視化や一元化・効率化は通過点に過ぎず、より良いサービスの提供や顧客接点の増加が真の目的であることを説明し続けることで、ゴールを共有する仲間を増やした。
ここで茂木氏は「どんなに小さなことでも、定量仮説と結果を伝えることが大切」と強調した。とくに取り組みに参加しているメンバーには必ず共有し、納得感・参画感を引き出したという。こうした取り組みを経て、ひとり、またひとりとECの利用促進に力を貸してくれるようになった。現在、購買などの顧客接点については5,000万レコードを可視化、商品情報においては30万SKUの一元管理を実現した。