売れる秘訣は「何を、どういう順番で」伝えるか
皆さんよくご存知のとおり、同じ内容でも言う順番が違うだけで、言葉から受ける印象は変わります。たとえば、次のふたつの例文を読み比べてください。
- あの人は、性格はきついが、仕事はできる
- あの人は、仕事はできるが、性格がきつい
どちらも同じことを言っていますが、Aは褒めているように、Bは非難しているように感じますね。一般的に文章というものは、あとに伝えた内容のほうが、より強く読み手の印象に残るというのは、よく知られたことです。しかし、実際はこんなにシンプルな文章ばかりではありません。ビジネスで使う文章はもっと複雑です。そのため、「起・承・転・結」や「序論・本論・結論」など「何を」「どういう順番で」言うと人が動きやすいかということが研究されています。これは書く場合だけでなく、話す場合でも同じです。
この「何を、どういう順番で言うか」という型のことを“メッセージモデル”と言います。メッセージモデルは場面に応じてさまざまな種類がありますが、今回は、代表的なメッセージモデルとして「PASBECONA」をご紹介しましょう。PASBECONAとは、9つの要素の頭文字と、それをどういう順番で構成するかをまとめたものです 。
Problem(問題) | 読み手が抱える問題点・痛みを提示する |
Affinity(親近) | 読み手の状態に理解を示す |
Solution(解決) | 解決策を提示する |
Benefit(利得) | それを買うとどんな良いことがあるのかを示す |
Evidence(証拠) | それが機能する証拠を示す |
Contents(内容) | 詳しい提案内容を提示する |
Offer(提案) | それを手に入れるための販売条件を提示する |
Narrow(適合) | 自分の価値観に合うように顧客を適合させる |
Action(行動) | 具体的な行動を呼びかける |
コピーライティングと言うと、一般的には「どのように」言うかという表現の技術だと思われがちです。私自身、家でできる仕事を探す中でセールスコピーライターという職を知ったときは「センスがモノを言う仕事」だと思っていました。しかし調べるうちに、どうやらセンスではなく原理原則に沿って書くもので、どのように言うかより、何をどのような順番で伝えるかのほうがはるかに重要だとわかりました。そしてその原理原則は、私が営業・営業企画として四半世紀以上書いてきた企画書・提案書や稟議書と同じだったのです。
今回ご紹介するPASBECONAは、売れる文章に共通する要素とその順番の頭文字を並べたものです。現在世の中に出ている広告の文章は、ほとんどがこのPASBECONAに沿って書かれています。そして、よくできた営業資料や営業トークは、自然とこの原理原則に沿っているのです。
それでは次のページから、社外向け/社内向けの営業資料にPASBECONAを使った具体例を見てみましょう。