営業DX実現へ 富士通でインサイドセールス立ち上げ
──富士通でインサイドセールス組織を立ち上げるに至った背景を教えていただけますか。
友廣 3人の中で、私が最初に富士通に入社しています。当初、インサイドセールスの立ち上げは誰かに求められたものではなく、あくまで私個人の興味の範囲内でしかありませんでした。そんななか、代表取締役社長が時田になり「営業DX」を掲げました。その構想と、私ができる「手触り感のある営業DX」であるインサイドセールスがつながった感覚がありました。
もうひとつ気づかされたのは、マーケティング職も変わらなくてはならないということです。日本企業におけるマーケティング職の地位は、それほど高くない。ウェブ屋だとか、イベント屋みたいに思われているわけです。そうではなく、売上貢献ができるマーケティング職に変化したいと考えたとき、インサイドセールスは重要な手段のひとつだろうと思い至りました。
──皆さん、外資系企業のご出身です。日本企業の富士通でインサイドセールス組織を立ち上げる際に持っていた意気込みを教えてください。
友廣 南と武居の入社前はただのプロジェクトチームでした。立ち上げを提案したところ、「やっても無駄だ」「すでに失敗した経験もある」「外資のようにソフトウェアでなく人が動くビジネスでは意味がない」など、率直に言うと否定されまくりました(笑)。そこで企画書をつくり、日々社内を説得することから始めていきました。
マーケティング組織内である程度コンセンサスがとれたところで、次は営業部にアプローチに行くことにしました。営業部に納得してもらうには、南のような経験者がいなければ対等に話ができないと考え、富士通に誘ったんです。
南 SAPジャパンに在職中、インサイドセールスのコンサルティングを副業で請け負っていました。誰もが知っているような日本の大企業も、「営業改革をしたい」「インサイドセールス組織を立ち上げなくては」という課題をお持ちでした。
またコロナ禍になり、日本のデジタル化が遅れていることがあからさまになりましたよね。日本企業に頑張ってほしいと心から思ったんです。インサイドセールスは、SaaSやスタートアップ企業では当たり前になっていますが、日本のエンタープライズ企業ではまだまだ。自分のスキルや経験を活かしたインサイドセールス組織立ち上げは、意味があるし面白そうだと誘いに乗りました。
武居 外資ベンダーに所属していると特定プロダクトしか扱うことができないケースも多いのですが、個人的にはいろいろなソリューションを扱うのが好きです。富士通は商材も幅広く、営業の方たちは既存顧客を中心に担当しているため、お客様の業種問わず新規開拓ができて楽しそうだなと。それまで日系企業の選択肢はなかったのですが、「何かあるかも」とピンと来て、現場のメンバーとして私もジョインを決めました。
「お手並み拝見」から「営業部の仲間」へ
──インサイドセールス組織の立ち上げにあたり、ぶつかった壁はありますか?
南 さまざまな営業部に立ち上げについて説明に回ったのですが、これまで、自分たちで新規開拓から既存のお客様のフォローまで行ってきていますから、分業の価値を理解してもらうのに苦労し、それが壁でした。活動開始当初は、「お手並み拝見」「十年かけて築き上げた富士通の品質を電話で保てるのか」と言われることもありました。
一方、富士通の営業部の方はお客様に対して誠実で、お客様に価値提供できることがわかるとすぐにこちらを向いてくれました。ヒアリングがきちんとできたり、商談の芽を見つけたりしたことを、評価してもらえたのです。
武居 より多くの企業様と接点を持つためにも、営業部に理解してもらうことは必須でした。南の話にもありましたが、自分のテリトリーを開放することに抵抗があるのに加え、インサイドセールスがどこまでの業務を担当するのか人によってイメージが異なっていたんです。よって1つひとつヒアリングしながら、「この営業さんにはこう」とテーラーメイドのように要望へ応えるようにしていきました。信頼と実績を積み重ねていくうちに、「なぜもっと早くインサイドセールスと協業しなかったんだろう」と思ってもらえるようになり、とてもうれしかったですね。
武居 別会社の委託先のような扱いから、半年くらい経つと仲間と認識され、「一緒に工場見学に行かないか」と誘ってもらえたり、担当変更の連絡をすると惜しんでもらえたりするようになりました。営業部との一体感はやりがいにつながっています。壁はたくさんありますが、ぶち壊すのも楽しいですよね。