「営業ナレッジ」の有効活用が期待できる
「誰に/何を/どのように」の「何を=営業ナレッジ」の部分では、AIによってどのような変化が起こるのだろうか。南日氏は次のように語る。
「提案書・見積書の作成、商談に向けた情報収集、社内打ち合わせなどの業務では『ナレッジ』、つまり資料が必要となります。しかし、ナレッジが社内に存在するにもかかわらず活用できていないことが企業の課題となっています」(南日氏)
たとえば、資料を探しても見つからないケース、隣のチームも似たような資料をつくっていたケース、上司の勘と経験に基づいてアドバイスが行われているケースなどが想定できる。南日氏が引用したデータ(出典:SiriusDecisions, Inc. 2015)によれば、社内の営業ナレッジの6割以上が「使用不能」または「発見不可能」となっており、有効活用されていないという。
「ここでAIを活用すれば、最適な提案書をサジェストしてくれます。たとえば『〇〇という商品を、〇〇業界向けに提案したい』とAIに指示することで、AIが過去の資料を読み込み、適切な提案書をレコメンドしてくれます。なお、このようなAIレコメンドを実現するには社内ナレッジの“総動員化”が重要です。つまり、提案書、事例、ノウハウなど社内のあらゆるナレッジをAIに読み込ませなければなりません。これを行うことで、状況に合った適切なアドバイスを得られるようになるのです」(南日氏)
また同氏は、社内打ち合わせの効率化も期待できると話す。
「例として、営業が顧客側の担当者と合意はできているものの、なかなかその先に進めない場面を想定しましょう。上司との打ち合わせの議事録を蓄積できていれば、過去に同じ状況で社内の上司がどのようにアドバイスしていたのかがわかり、提案に落とし込むことができます。上司のスケジュールに左右されず、自分のタイミングでAIに相談できるため、効率化が期待できます」(南日氏)
「営業プロセス」において客観的な助言が得られる
続いて南日氏は「どのように=営業プロセス」の部分で起こる変化を解説する。「営業プロセス」には、顧客との商談や個別連絡などの業務が該当する。
「たとえば、ウェブ商談中にAIが自動でアドバイスを送るといった活用が考えられます。会話の中で出てきた深掘りしたほうが良いキーワードをAIがこっそり教えてくれるわけです。客観的なアドバイスをリアルタイムで得られるのがポイントですね」(南日氏)
また、顧客への個別連絡業務をフォローするソリューションの提供も始まっているという。
「たとえば商談が終わったあと、お礼メールをAIが自動で作成してくれます。あるいは、次回のアクションを想定し、メールに入れるべき内容の提案も行ってくれるようになります。こうしたことができるプロダクトは、外資系の大手企業がすでに提供しています」(南日氏)