営業組織がAI活用を実現していくには?
ここまでAIが営業にもたらす影響が解説された。では、実際に営業組織がAI活用を推進していくにはどのようなことを意識すれば良いのか。南日氏は大きく3つのポイント「1. 組織方針」「2. 組織体制」「3. 現場利用」が重要になると語る。
ひとつめの「組織方針」は、AI活用を規制するか活用するかで分かれる。つまり、情報漏えいや事実誤認といった「リスク」と捉えるか、生産性向上につながる「機会」と捉えるかだ。これらは部門によっても視点が変わってくると南日氏は言う。全体の戦略を紐解き、どのような基準でAI活用を判断するのがベターなのかを検討することが企業には求められる。
ふたつめの「組織体制」は、フロント部門のように「人数」を重視した組織体制なのか、営業企画のように「生産性」を重視した組織体制なのかがポイントとなる。昨今、コロナ禍の影響もあり、売上向上よりも利益を追求する風潮が高まっていると話す南日氏。この潮流を踏まえ、単に人を増やすのではなく、今いる人員の出力を上げていくことを意識することが重要となる。「AIなどのテクノロジーを活用するうえでは、ラインの生産性を重視した組織編成が非常に重要です」と同氏は強調する。
3つめの「現場利用」は、実際の業務への組み込みを意味する。組織方針や組織体制が決まったあとの工程として必要だが、多くの組織ではこの工程が抜けてしまいがちだという。生産性の向上は、ひとりで取り組むのではなく全体で取り組んでいかなければならない。そのために必要なのは営業の業務を標準化することだ。また、現場を管轄するマネージャーが組織方針を理解し、オペレーションを徹底的に現場まで落とし込むことも重要である。
一方、時代の流れは速いため、組織方針の切り替え判断を早くする心構えも必要だ、と南日氏は補足した。
「テクノロジー技術のトレンドの移り変わりは速いです。一度決めた方針を変えたり、チューニングしたりする必要性も発生するでしょう。営業の自主性に重きを置きすぎると、戦略や方針が変わったタイミングで舵取りについてこれらなくなる可能性があります。現場利用の観点については、ある程度『標準性』を重視したうえで落とし込むのが良いと考えます」(南日氏)
「ナレッジワーク」にもChatGPTがすでに搭載
同社が提供する「ナレッジワーク」は、営業ナレッジを共有化するためのツールだ。「誰に/何を/どのように」の「何を」の部分で効果を発揮する。条件での絞り込みや、フリーワードでの検索機能も備えており、スピーディーに資料を探せるのが魅力であると同氏は語る。
「たとえば資料を探す際、用途は『商談用』、営業フェーズは『課題の合意をしたい』、業種は『金融』と条件指定します。そうすると、適した資料の一覧が出てきます。グルメ情報や物件情報の検索サイトと同じような使い勝手をイメージしていただけるとわかりやすいでしょう」(南日氏)
さらに同ツールは、すでにChatGPTを活用した機能「Knowledge AI Chat(β)」を実装している。
「たとえば『競合商品Xを検討中のお客様に、自社の商品の魅力を伝えるにはどうすれば良いか』とたずねます。そうすると適切な情報や資料が即座にレコメンドされ、該当の資料に素早く飛べるようになっています。これにより、上司や同僚に質問する手間を省けるわけです」(南日氏)
「もし、営業課題についてディスカッションしたいと感じておられる方や、ツールに興味がある方がいらっしゃれば、ぜひ当社にご連絡ください」──。南日氏はそう言ってセッションを締め括った。