400名超を率いる営業の総責任者
──まずは谷川さんのこれまでのご経歴を教えてください。
大学卒業後に入社した旅行会社の法人営業職が、私のファーストキャリアです。2002年にアメリカン・エキスプレスへ転職し、最初は個人向けにカードの営業をしていました。その後、パートナー向けの営業を経験してマネージャーに就任し、マーケティング部門に異動してからもマネージャーとディレクターを歴任しました。
転機が訪れたのは2014年です。BtoB事業を拡大する社の新方針にともない、法人カード営業本部を率いるディレクターのポジションが新設されたため、着任しました。このチームのミッションは、中小企業や個人事業主向けに法人カードを提案すること。企業間取引の決済方法は銀行振り込みがほとんどで、カード決済を採用している企業はごく一部です。そのため、まずは法人カードを使える環境から整えていく必要があります。市場創造と利用企業拡大の両輪を回す、いわば新規事業に近いビジネスです。
事業の拡大に向けて人を増やすためには、米国本社からの投資が不可欠です。毎年マイルストーンを設定し、経営陣にビジネスプランをプレゼンしていました。チームメンバーのおかげで業績は伸長。上司や周囲のサポートもあり、メンバーを8倍近く増やすことができました。今では日本支社の売上の約半分を法人事業部門が担っています。
2019年に法人カード営業本部で副社長に就任しましたが、2022年に個人カードと法人カードの営業組織が統合されることになりました。これにより、現在は個人向け・法人向け合わせて400名超の営業メンバーを統括しています。
営業で培った筋肉はマネジメントにも応用可能
──BtoBとBtoCではセールスのアプローチが大きく異なります。両部門の統合は思い切った決断だったのではないでしょうか。
非常に大きな出来事でした。グローバルでもBtoBとBtoCのセールスを統合した事例はなく、日本の取り組みはアメリカン・エキスプレスのビジネスにおいて初の試みと言えます。同じ営業と言っても売り物や販売プロセスが異なりますし、何より一部のメンバーからすると上司ややるべきことが突然変わるわけですから、スムーズな移行には苦心しました。メンバーの強い意志と、さまざまな方の協力によって乗り越えられたと思います。
──かつての営業経験は、その後のキャリアにも活きていると思いますか。
非常に役立っていると思います。営業は市場とお客様の特性を熟知し、ゴールまでもっとも効率的に近づく方法を考えなければなりません。つまり、マーケティングの考え方が求められるのです。この考え方はリーダー職にも応用できます。主語が自分からチームに変わるだけで「生産性をいかに上げるか」「どうすれば(メンバーが)活躍できるか」という問いそのものは同じだからです。
──キャリアアップのモチベーションを教えてください。
間違いなく人ですね。私はずぼらな性格ということもあり“自分磨き”は苦手ですが、他者が関わると「何とかしなきゃ」という義務感や使命感が働きますし、何といっても楽しいです。営業メンバーの中には壮大な夢を語るドリーマーもいて(笑)。たまに驚くこともありますが、新しいアイデアを聞くとワクワクします。
──谷川さんご自身はドリーマーではないのでしょうか。
私は完全にマネージャー気質だと思います。各人の強みを組み合わせたり、誰かのアイデアを実現するための仕組みを考えたりするほうが得意です。規模の大きいチームを統括すると裁量の範囲も広がります。たいへんなことはありますが楽しみも大きいです。