コミュニティを事業の重要戦略に位置づける
高橋(HiCustomer) 本日はカスタマーサクセスの中でも「コミュニティ」をテーマに、運営のTipsにとどまらない根本的な考え方についてもお聞きしたいです。まずは橘さんと降井さんのカスタマーサクセスへの関わり方を教えてください。
橘(弁護士ドットコム) 取締役かつクラウドサイン事業の責任者を務めています。ユーザーにひとつでも多くの契約をクラウドサインで実施してもらい、共に社会を変えていかねばならないという使命感を持っています。
降井(弁護士ドットコム) マーケティング組織の立場から、導入直後のお客様へのオンボーディングセミナーや、ユーザー会、コミュニティに携わっています。
高橋 コミュニティへ注力するきっかけとなった出来事はありますか。
橘 2020年10月に山梨県にある「はんこの里」を訪れ、歴史について学びました。150年ほど前に生まれたはんこは当時「便利だけれど、偽造がしやすい危ないツール」と思われていたそうです。それから当時の役人や法律家たちが、汗をかいて全国的な業務フロー改革を行った結果、国民的なツールになったわけです。
これは、少し前までの電子契約の状況と非常に似ています。電子契約も「便利そうだけど、セキュリティレベルが不安」という声が数年前まではありました。2020年以降の法改正の流れを受け、まさにいま少しずつ変化しています。ここからさらに、国民的なツールへと進化させ、社会を変えるためには、ユーザーの皆さまの力が必要不可欠だと考え、2021年度は私の直下でコミュニティのプロジェクトを立ち上げました。
高橋 単なるツール活用ではなく、一緒に社会を変えていく──そのためにはユーザーとの取り組みをより深める必要があったのですね。
橘 社としても2021年度の事業戦略において、「市場戦略」「製品戦略」と同列の3つめの柱として「コミュニティ」を位置づけました。カスタマーサクセス施策のひとつ、ではなく全社的な取り組み、という意識が浸透しています。
戦略として位置づけるにあたり急成長SaaSの代表格であるSalesforceのユーザーコミュニティにも注目しました。Salesforceが提供する認定資格制度やユーザー同士が仲間となって学ぶことができる仕組みこそが同社の成長の源泉であると私は考えたのです。コミュニティ活動はSaaS企業の成長において、大きいファクターになると理解しています。