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SalesZine Day(セールスジン・デイ)とは、テクノロジーで営業組織を支援するウェブマガジン「SalesZine」が主催するイベントです。 丸1日を通してSales Techのトレンドや最新事例を効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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企業の競争力を高める「営業DX」とは? 日本の営業組織の未来を探る powered by SalesZine

2024年4月18日(木)14:00~15:30

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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SFA導入の課題は20年変わっていない!? リーダーは「一律に改革を仕掛けることは難しい」前提に立つ

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 2021年12月15日より発売となった電子書籍『ニューノーマル時代の営業組織デザイン データ×組織で実現する真の営業DX(SalesZine Digital First)』。著者の千葉友範さんに編集部でインタビューを実施しました。本書は千葉さんよるSalesZineの人気連載「いまこそ知りたい営業組織のDX」 「ニューノーマル時代における営業の組織デザイン―― 顧客の行動変容が営業組織を再設計する」に最新事例やコラムを加筆したものです。

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SFA/CRMの課題感が20年変化していないという危機感

――実はSalesZineで千葉さんに単独インタビューを行うのは初めてです。あらためて千葉さんと「営業」の出会いについて教えてください。

もともと、コンサルタントとして営業改革プロジェクトやSFA/CRM導入に携わることはたくさんありましたが、本書のような発信につながる最初の出会いはSFA/CRM系のクラウド企業に出向していたときです。自分のバックグラウンドである「管理会計」と「The Model」の考え方が非常に類似していると感じ、営業改革の面白さにのめり込んでいきました。自分自身が営業マネージャーを経験したのはその後IoTベンチャーに勤めた際で、約20年の自分のキャリアの中で言えば、かなり後半でした。

EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ディレクター 千葉友範さん

「営業を科学する」考え方は昔からあるものですが、私にとっては「科学=管理会計」でした。管理会計は、企業活動のメカニズムを定量的に解き明かしたうえで、それをマネジメントしていく分野です。言わば「コマンド&コントロール」の世界で、「そのとおりに動いているか?」を財務データ・非財務データをベースに見てきた経験が、現在の営業改革に関する考え方に大きく影響しています。

――電子書籍『ニューノーマル時代の営業組織デザイン データ×組織で実現する真の営業DX(SalesZine Digital First)』ではコロナ禍におけるどのような変化を受けて、営業組織にどういったことを伝えたいという思いで執筆いただいたのでしょうか。

2000年から2021年までの総務省統計局「労働力調査年報」を比較すると、「営業職(販売従事者)」は約120万人減っています。一方、日本能率協会が毎年公開している「企業の経営課題」に関する調査を見ると、課題のトップ3に「売上あるいはシェア向上」が常にランクインしています。つまり、「営業をどう強くするべきか」という経営課題は変化していない。しかし、顧客と営業を取り巻く環境は変化しており、単にモノを売るだけの時代から、お客様と「つながる」ことへとテーマが動いているのは、D2C、カスタマーサクセスというキーワードの拡がりからも明らかですよね。

背景は変化しているため、解くべき問いも変わっているはずですが、相談されることは変わらない不思議さをコンサルタントとして感じていました。たとえば、営業改革やSFA/CRM導入・再編に関する問い合わせを数多く受けていますが、顧客が抱える課題は私が社会人になったばかりの20年前とほとんど一緒です。

つまり背景が変化していることを理解せぬまま、いまでも「SFA/CRMを導入したら解決する」という勘違いが根強く残っているわけです。導入以前に、たとえばサービス・製品体系をきちんとつくり変えなくてはいけないかもしれません。そのためには、組織をつくりかえ、プロセスも見直す必要もあるかもしれない。そのうえで最後にテクノロジーをどう導入するか、再構築するかという話になります。なぜ必要かを理解しないままにツール導入が進んでは本末転倒ですから、コンサルとしてきちんと伝えないといけないと思ったのです。

SFA/CRM導入後、半数以上の企業がうまく定着化できていないとも言われています。「何のために導入するのか」という最初のボタンを掛け違ってしまえば、当然使い方も間違えます。目的とゴール設定を誤ってしまっているのが大きな問題だと思います。また、コロナ禍ではリアル(対面)とデジタル(非対面)でハイブリッドの顧客接点を持つ組織も増えたでしょう。目的が曖昧なままバズワードに反応し、「インサイドセールスが良さそう」となんとなく導入することも、SFA/CRMのプロジェクトと同様の結果を招きかねません。

そもそも、本書のベースになる企画を立ち上げたのはコロナ禍以前でした。コロナ禍ではもともと蓄積されていた「営業組織の諸課題」が顕在化し、向き合うべきタイミングが早まったと私は考えています。

「複雑な商材」を売ることに疲弊する営業現場

――コロナ禍以前から日本企業の営業組織が抱えやすかった課題はどのようなものでしょうか。

ひとつは「お客様との接点づくり」ですね。企業は、営業、マーケティング、アフターセールス(カスタマーサポートやコールセンター)など複数の顧客接点を持っていますが、それぞれが独立・個別最適化されており、情報も一元管理されていないことがしばしばあります。

あるメーカーでは、既存顧客からのクレームがコールセンターに入っているのに、営業担当者はそれを知らずに新商品をのんきにプレゼンし、お客様に「その前にいま困っている、これをどうにかしてくれ!」と怒鳴られてしまったという話がありました。大なり小なり、現場で起こってしまっていることでしょう。自分たちのお客様はどういう状態か、営業はこのデータが見えないと怖いですよね。コロナ禍以前から存在した課題ですが、オフィスの中を歩いていれば誰かが情報を教えてくれるということもなくなり、顕在化してきた現状があります。

私が支援する企業のリーダーには、「ユーザー側が求めていることを見極め、顧客接点と組織を再設計する良いタイミングですね」とよくお伝えしています。課題が顕在化してきたコロナ禍は、「お客様が求めているけれど対応できていなかったこと」に着手する絶好のタイミングでもあると思います。

――対顧客の視点ではデータ一元化の課題が顕在化したということですね。一方、先ほどうかがったように純粋な営業の数は減りながらも、経営課題は「売上の伸長」、このギャップのなかで営業現場・チームにはどのような課題が残されているのでしょう。

ひとつは商材が変化するなかで「売り切れていない」こと。現場の営業は「売ること」に疲れてしまっています。典型的なパターンは、ハードウェアを販売していた会社が、IoT技術の進化によってサブスクリプションのサービスも売っていかねばならないという変化です。売り方はまったく変わってきますし、日本には代理店販売も多いですから、複雑な商材×複雑な商流となると、もはやプロセスマネジメントができている企業も少ないでしょう。

会社は、顧客のニーズに合わせて複雑で新しい製品やサービスをどんどんつくりますが、残念なことに売る側は売りづらくてしょうがない。クロージングに向かう間に、本書でも触れた「4つの不」を解消していく必要があるのですが、正解がわからない状況にある営業も多いはずです。端的に言えば、新しいものを売る「型」がないわけです。「どうやって売るんだろう」という思いを抱えたまま、売り切るのは至難の業なのです。

――営業に求められるスキルもまた複雑で難しくなっているんですね。そして、マネージャーは、新しい商材を売るプロセスについて経験がないということでしょうか。

そうですね。プロセスや役割分担の手法にも皆さん困っているのでしょう。たとえば海外ではもう少し職種が分かれていて、分業・専業化されています。「ハイタッチ担当」「アカウントマネジメント・エンゲージメント担当」「ソリューションチームからきたテクノロジーサポート担当」というように役割ごとに営業職がいるわけです。アカウントセールス、ソリューションセールス、インサイドセールス、セールスマーケテイングもそうですよね。ここが日本と欧米型の営業組織の大きな違いで、日本で同様の取り組みを目指すと「タコつぼ化」しやすい傾向があります。欧米型も明確に役割は決まってはいますが、KPI設定に工夫があり、工程をまたがるかたちで隣接するチームが同様のKPIを持つのです。

たとえば、見込み客にインサイドセールスが架電しアポを獲得しますが、これを「有効商談1件」と評価をするのは次の工程にいるフィールドセールスです。たとえたくさんアポが獲得されても、それが「商談」にならなければ、無駄な労力をかけることになり、両職種間における信頼感も失われます。もちろん、インサイドセールスの前工程であるマーケティングが「イベントを何回実施したか」「どれくらいの見込み客と接点を持ったか」は先行指標ではありますが、それが売上につながったかを振り返る仕組みが必要です。このような全体最適なKPIの組み立て方と役割分担、それぞれのロールに対する育成に日本ではまだ曖昧な部分が残っていると思います。

――それぞれの役割を明確にしながらも連携していく、ある意味で「逆算力」みたいなものがあらゆるシーンで求められるスキルになっているようにも思います。

そうですね。日本でも海外でも「お客様に信頼される」ことは非常に重要です。ご飯やゴルフに一緒に行くのも良いでしょう。ただ「信頼だけ」では売れなくなっている時代です。あらゆる製品がコモディティ化していて、「商品力だけ」で売ることも難しい。お客様の課題は何か、それをどう解決できるのか? を言語化する力はもちろん、「モノ」ではなく「サービス」をお客様に適切に提案し、届けられるか。何段階かのプロセスを経て、「最後はあなたに任せるよ」と言われる信頼営業みたいなものがあるんですね。究極的には人と人のつながりが意思決定につながることも間違いないですが、そこに到達するまでの型をどうつくるかを考えなければなりません。

最先端の営業組織は「フォーキャスト」がぶれない

――本書の中では、営業組織のテクノロジー活用/組織変革における事例がいくつか紹介されます。千葉さんが、組織変革を支援するなかで最先端の企業ではどのような変革が起こり始めているのでしょうか。

テクノロジーを導入していれば最先端かと言えば、ある一面ではそうですが、DXを実現ししっかり売上や成果を挙げている企業が最先端だとすれば、そこには型があり、テクノロジーを手段として使いこなしているという共通点があります。さらにプロセスがきちんと可視化されており、「これくらいで着地するだろう」というフォーキャストがぶれない組織は最先端の営業組織だと言えると思います。

私が営業マネージャーになったときも、まずはフォーキャストをぶらさないことから始めました。組織運営において、コストは極端に言えば努力で変動させることができますが、売上はお客様との共同作業ですから、プロセスが重要です。たとえば1億円の目標があって、結果が5,000万円だと目も当てられないですが(笑)、9,900万、百歩譲って9,000万円だとしたら、へこんだ分のコストを切り詰めつつ、次も頑張ってみようと考えることができます。

フォーキャストの精度はマイナスだけではなく、プラスの際も気をつける必要があります。もちろん、ラッキーパンチで売上が上がることもありますが、それは「マネジメントできていなかった案件」だと私は捉えていました。営業組織の売上目標というのは、会社や株主に対する約束です。ゆえに、最先端の会社は「計画どおり」にビジネスを進めるためにテクノロジーを活用して、プロセス管理をしているわけです。

――計画自体が甘いと上振れも未達も発生してしまいますし、データとテクノロジーの活用で、そもそもの目標設計から適切に行うことができるのが強い組織ですよね。上振れも良くない、というのもその意味で印象的でした。

上振れは良くないです。基本的に企業は永続的に続いていくという考え方に基づき、会社が持続的にグロースするために売上を上げ、株主や従業員に還元していく必要があるわけです。上振れしても配当や給与が同じ、逆に未達でも同じ、という状況では継続的な経営が見込めない、約束できない企業と見なされてしまう可能性があります。現実的なラインだけど、少しストレッチした数字を見極める。これは会社経営の基本でもあります。

従業員を疲弊させないツール導入 "CX×EX"でUX実現を

――次の千葉さんのチャレンジについて教えてください。

「UXをきちんと営業組織の中に取り入れていく」ことに、あらためてチャレンジしようと考えています。そもそも、UXとはCX(Customer Experience)とEX(Employee Experience)このふたつが組み合わさって初めて実現するものです。

世の中にはお客様側のユーザー体験をどう高めるか、つまりCXだけを追求して「UX」としているケースが多いです。しかし、その裏で従業員側が過剰なコストで働いている世界では、EXが満たされていません。これは、SFA/CRM導入も同様です。「お客様=マネージャーなどの管理者」で、管理者側の体験が良くなっても、現場の営業担当者のEXが向上していなければ意味はない。両軸で追求することが必要です。「DXだ!」「営業・顧客管理をデジタルでカバーしよう!」と言いながら、現場に非常に多い入力項目を頻度高く求め、マネジメント層がダッシュボードを見るためにIT部門が複雑なシステムを都度つないでいる苦労があるとしたら、UXは達成されてないと見なされるべきです。

CX向上は大前提ですが、CXばかりが優先されて従業員が苦労するのはサステナブルではないありません。管理側の論理による導入が続く限り「導入によって、より手間が発生している」状況に陥ります。本書で紹介した「ワークログ」「ワークエージェント」の話にもつながりますが、導入することで仕事が楽になったり、勝率が上がったりする設計ができて初めてUXが実現されるはずです。

加えて、D2Cやカスタマーサクセスの拡がりを受け、「顧客接点を正しくつくり直す」ことにも深くかかわっていきたいですね。DX(デジタル・トランスフォーメーション)を通じて、エクスペリエンスをどう変えるかという点は一貫していて、体験ありきでデジタル活用を考える、この考え方を浸透させる取り組みを深めていきたいです。

「改革を一律に仕掛けることは難しい」前提に立つ

――先行きが見通しづらい時代が続きますが、営業変革に挑むリーダーに対して千葉さんからのメッセージをいただけますか。

本書の「第3章 ニューノーマル時代の営業組織の未来像」でも述べましたが、組織内の全員を同じ方向に向けること、改革を一律に仕掛けることは難しいことをすべてのリーダーに伝えたいです。たとえば、組織変革を行った際にオンボーディングをどう進めるか? 日本人はどうしても「均等に伝える・動かす」ことを良しとしますが、私はまずは必ず変容して欲しい人にターゲットを絞り、合理的に行っても良いと思うのです。

この話をすると必ず「一部の人間を切り捨てるのか?」と聞かれますが、決してそうではありません。組織の目標は売上を上げること、そしてその手段として組織を変革していくのであれば、まずは船に乗せるべき人をきちんと載せて船出をすることがリーダーに求められる最低限のことでしょう。そのうえで、それ以外の人をどう仲間に仕立てていくのかを検討すれば良いと思います。まずは絞ったターゲットが確実に行動変容しているのかを見極めることに時間や労力を費やしましょう。「すべて一律に」がリーダーを縛り、それ以外のことに時間を割きすぎてしまっている方が多い気もします。

変革に挑むとき、抵抗勢力が出るのも当たり前のことで、これもまた一律に拾っていくのは難しいです。戦略的な取捨選択が必要ですが、「捨てる施策」を間違ってはいけないこともリーダーは真剣に考えなければなりません。

――マネージャーの仕事はかなり多岐にわたっています。ビジネスパーソンとして最低限行わなければならないこともありますが、戦略的に自分がどう成果を出すか考えてみてもらうのが良いのかもしれません。

「営業DX」で求められていることは何か。現場の標準化はもちろんですが、実はマネジメントの標準化も同様に必要とされているんですよね。現場ではプロセスの型ができることで、お客様とつながり、信頼関係を築く部分にクリエイティブな世界があります。マネジメントも、データやファクトに基づいてメンバーに適切なフィードバックを行うという部分はある程度、型化できるはずです。

歌舞伎では型を学んだうえで、自分の特徴を出して初めて「型破り」と言われます。そうでなければ、「型無しの人」と言われます。営業マネージャーも仕組みやテクノロジーで型をつくり、自分の経験やインスピレーションをマネージャーのキャラクターとして味付けに刷れば良いのではないでしょうか。「デジタルで標準化」「人間でオリジナル」の二項対立ではないことも、忘れずに取り組んでいただきたいですね。

――テクノロジーや型という武器については、ぜひ本書で学んでいただきつつ、戦略的にマネジメントを楽しんでいただきたいですね。ありがとうございました!

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ニューノーマル時代の営業組織デザイン データ×組織で実現する真の営業DX(SalesZine Digital First)

本書について

本書では、新時代の組織づくりや営業DXの実現に課題を抱えるリーダー層に向け、営業組織のテクノロジー活用や組織改革における基本的な考え方から実践事例を提供します。社会環境や顧客の購買行動の変化に対し、自社の打ち手に悩む営業マネージャー、経営者の方にぜひ手にとっていただきたい1冊です。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://saleszine.jp/article/detail/3251 2022/03/16 13:34

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