ペーパーレス、金融業界の再編 御用聞きは通用せず
山下(R-Square & Company) 凸版印刷さんの事業と、今回セールス・イネーブルメントに取り組んだセキュア事業部の位置づけについて教えてください。
松山(凸版印刷) 当社は1900年に創業しており、現在は大きく3つの事業分野に注力しています。ひとつめがセキュア事業部も所属する情報コミュニケーション事業分野、ふたつめが生活産業事業分野、3つめがエレクトロニクス事業分野です。2020年3月時点の売上高の内訳は、情報コミュニケーション事業分野が約60%、その内、ペーパーメディアはすでに20%程度です。残りの内訳が生活産業が約28%、エレクトロニクスが約11%となっています。
情報コミュニケーション分野には、セキュア事業部以外に、出版系企業を主な得意先とする情報メディア事業部、流通業界の得意先が多いマーケティング事業部、公共系に提案を行うソーシャルイノベーション事業部があり、セキュア事業部の主な得意先は金融機関です。
山下 やはり「印刷の会社」というイメージを持つ方も多いと思うのですが、売上比率を拝見すると、各事業のバランスが非常に良いですね。セキュア事業部の営業組織では、近年どのようなことに注力されているのでしょうか。
松山 セキュア事業部の売上は大きく3つのビジネスで構成されています。ひとつめは切手、はがき、商品券や通帳のような不正を防ぐべき「証券印刷」。凸版印刷は元々大蔵省印刷局の技術官がスピンアウトして創立した会社ですから、証券印刷は祖業にあたります。次にクレジットカードやキャッシュカードなどのカードビジネスをスタートし、現在は3つめの柱としてDXやBPOソリューションも提供しています。凸版印刷の中期経営計画では事業ポートフォリオの変革を重点施策のひとつとしており、BPOも含めたDX事業を2025年度までに全社営業利益の30%まで伸ばすことを目指しています。
山下 高い目標に向かわれていることがわかりました。松山さん自身が約15年間金融機関を主な得意先として営業に従事されたのち、2019年に戦略立案や組織づくりを担う現在の役割に異動されたとのことですが、営業を取り巻く環境の変化についてうかがえますか。
松山 2005年に新卒入社し、生命・損害保険業界を15年ほど担当しました。それこそ、入社当時は保険商品のパンフレットや約款など、紙の印刷物に関する仕事が大半でしたね。ただ、その後ペーパーレス化の波が押し寄せ、従来の印刷のビジネスの需要が減少し始めていました。金融機関ではFinTechといったキーワードも登場し、お客様が求めることが多岐にわたるようになったのです。
山下 「御用聞き」だけでは、お客様の課題が解決できなくなったような印象もあります。新しいDX・BPOソリューションを提供するにあたって凸版印刷の強みはどのような点にあったのでしょうか。
松山 我々の強みのひとつはやはり印刷物で培ってきたノウハウで、見る人にわかりやすい印刷物をつくってきたからこそ、デジタル上に載せたときの「UI/UX」には自信がありました。またBPO事業に関しても、業務改善のコンサルだけでなく、その先のBPOまで一気通貫で行えるのは、ものづくり企業ならではです。加えて、セキュリティ商材を扱ってきたため、個人情報などの取り扱いに関するノウハウの蓄積も我々の強みのひとつですね。