やっとの思いで立ち上げた新規事業、しかし目標達成率は20%
――ランドスキップの取締役かつ、NTT西日本のビジネスデザイン部門にも所属されています。経歴をまずは教えていただけますか。
2009年にNTT西日本に入社し、4年間支店の販売戦略やアライアンスを担当しました。もともと事業開発にチャレンジしたい思いがあり、本社のビジネス開発組織へ異動が叶うのですが、すでに数多くのサービスを提供している会社ですから、事業開発というよりは企画や組織運営、既存サービスの収支モニタリングなど管理部門業務に近い仕事をすることになりました。サービスの立ち上げを行うプレイヤー的な業務ができず、残念に思う部分もありましたが、それなりにやりがいは感じられていました。
ただ、社外の人と接する機会も少なく、自分の持っているスキルが社内で通用するものに閉じていく感覚があり、今後のキャリアについて悩むようになりました。そんなとき、ローンディールさんが大企業の人材をベンチャー企業に出向させる「レンタル移籍」のサービスを立ち上げて1期生を探していました。NTT西日本の導入が決まり、当時の上司がせっかくだから行っておいでと僕の背中を押してくれて、ランドスキップへの1年間の移籍が決まりました。「よくファーストペンギンになったね」と周囲は褒めてくれましたが、正直当時は僕自身もびびっていて、「押すなよ」と思っていたら押された感じなのですが(笑)。
――大企業とベンチャーの働き方には、どんな違いがありましたか。
いちばんの学びは、新規事業は非常に不確実なものだということです。経営環境も未来のことも不確定の状態で求められるマインドや行動、スピーディーな意思決定の必要性を学ぶことができました。大きな組織で管理の役割を担うときは「いかに失敗せずに、組織を確実に運用していくか」が非常に重要でしたし、企業内に知見もたまっていますから上司や会社も答えを持っている業務が多いです。求められている答えに近づけていく仕事のやり方が身についていたんだと実感しました。7年間働いてきてそれなりにスキルを積み上げてきたつもりでしたが、最初の1ヵ月は自分がこんなに役に立てないとは……と落ち込みましたし、期待して受け入れてくれたランドスキップの皆さんに申し訳ない思いでした。
そんな折、ランドスキップの社長が「自分自身も悩み、怖いと思いながら、意思決定をしているんです」と腹を割って話してくれたんです。僕がイメージする上司は、「間違えない、部下を良い方向に導く存在」だったのですが、社長自ら、「答えはないものだ」と言ってくれたことで心理的な安全性が担保され、かなり動きやすくなりましたね。振り返れば、不確実な新規事業と大企業の仕事で使う筋肉が違っただけだなと思えます。どちらの仕事の仕方にも、良し悪しはなく必要なスキルはその組織のフェーズや世の中の状況にも左右されます。結果的に両方を学ぶことできて本当に良い経験をさせてもらえました。
――LOOOK事業の立ち上げについて教えてください。
NTT西日本に戻り、既存の新規事業に取り組んでいたのですが、学んだことを活かしたいという気持ちも強くなっていました。そこで、市場インタビューなどを行って企画し上申したのが、デジタルサイネージ「LOOOK」の事業です。ビジネスは開発から実際のサービスとしてローンチするのに2年ほどかかることが多いと思います。LOOOKの立ち上げにおいては、捨てられるものは捨て、リスクを背負って懸命に取り組んだことで10ヵ月ほどでローンチさせることができました。次の山は、事業計画どおりに売っていくことです。自信を持ってつくったサービスですから、3~4年でそれなりの設置数を達成する計画を立てました。
NTT内では一般的な、ターゲットをある程度絞りテレアポをするという営業手法を採用したのですが、新規商材ではなかなか期待通りの商談率や受注率に届かず……。お恥ずかしい話ですが毎月計画の10~20%くらいの達成率でした。LOOOKはランドスキップとNTT西日本グループの共同事業で、ランドスキップの社長がトップセールスで売ってくれて、それでぎりぎりしのいでいる状態がローンチ後の半年間は続いていました。