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明治19年創業のカクイチが挑んだDXとは コロナ禍でも前年比132%売上のワケに迫る

2020/09/24 07:00

 創業135年の歴史を持ちながら、異分野への果敢な事業展開でベンチャー企業のようにチャレンジングな動きを続ける株式会社カクイチだが、数年前まではオフィスにPCが1台しかなく、FAXと電話でコミュニケーションが完結する、ITリテラシーは高くない企業だった。そんな同社が現在はコミュニケーションツールの「Slack」や「Unipos」などを活用し、コロナ禍を万全の態勢で迎えることができているというから驚きだ。大改革の裏側を社長に聞いた。

伝統ある企業でも、DXには挑戦できる

――御社はかなり手広く事業を展開されていますよね。

明治19年に金物問屋として出発した弊社は、戦後に樹脂ホース事業を1から始め、その後もガレージや物置の製造、ミネラルウォーターの販売、ホテルの経営など、多様な事業を手がけています。一見脈絡がないように思われますが、それぞれの事業にはお取引先とのご縁や弊社なりのテーマがあります。たとえば、2012年に始めたホテル事業は、前最高顧問が贔屓にしていたホテルから経営を任せられないかと相談されたことが参入のきっかけでした。メーカーとしてものを売るにあたり、おもてなしの神髄を学ぶ必要があると考えてチャレンジした結果、広告を一切出さずにトリップアドバイザー「トラベラーズチョイスアワード 2020 人気の小規模ホテル口コミ評価」で1位となりました。

 
株式会社カクイチ 代表取締役社長 田中離有さん

――長い歴史を持ちながら新しいチャレンジを止めない御社のあり方には「老舗ベンチャー企業」という表現がぴったりです。社内のDXにも2018年から本格的に着手されたそうですが、かなりの大仕事だったようですね。

実は、2014年まで個人に業務用のメールアドレスやPCが支給されておらず、インターネット環境が整ったのも2018年とかなり遅めでした。営業所にある1台のPCをみんなで使い、主に電話とFAXでコミュニケーションをとっていました。平均年齢45歳というベテラン揃いの社員の中には、最近までAmazonをアマゾン川と勘違いしていた強者もいるくらい、社内のITリテラシーが高いとは言えない状況でした。

「うちはIT系の会社じゃない」というのは言い訳で、非IT企業でもDXにチャレンジしているところはたくさんあります。変革は「革を変える」と書くくらいに、痛みや血が伴うものです。弊社の場合は異分野で事業を展開していた文化が背景にあったため、変化で生じる軋轢には耐性があったと思います。2016年にようやく業務用iPhoneが支給され、2018年に知人から勧められた社員同士で感謝のメッセージと少額のインセンティブを贈り合うUniposと、オープンなコミュニケーションプラットフォームであるSlackを試験的に導入しました。

――一気にIT改革を進められたわけですね。実際にSlackとUniposを導入されてみて、いかがでしたか?

Slackはオープンである一方、それまで当事者間に閉じていた情報や会話が誰でも見られるようになったので、抵抗を示す社員も少なくありませんでした。個人情報などのデリケートなものは除き、社内の話に鍵をかける必要はないはずです。セキュリティより大事なものがあると伝え、徐々にオープンな文化を作った結果、改革がうまく運びました。

また、コロナ禍でリモートワークが進んだ多くの企業でも言われていることですが、オープンかつフラットなコミュニケーションプラットフォームの登場によって中間管理職が担う役割が不要になったことも大きな変化でした。序列のないZoomでは真っ当な発言をする人が評価されますから、役職に就いていようと発言しない人は御役御免です。Uniposを活用する他の企業では、感謝や拍手をもらった人が評価されているようですが、弊社ではUniposでもSlackでも、受信側より発信側を評価するようにしています。わざわざ時間を割いてPCに向かい、相手のことを考えながら文章を打ち込む人こそ素晴らしいと考えているからです。「ありがとうは言われるより言うほうが幸せ」という価値観がツール導入以前から社内に浸透していたので、Slackが単なる業務連絡ツールになることはありませんでした。

ホテル事業で学んだおもてなしの神髄が、ここでも活きていると思います。弊社ではおもてなしを「相手のことを知り、想像し、粋な計らいで自分が良いと思う振る舞いをすること」だと定義しています。そういう気持ちでUniposのメッセージを送り、受け手が喜んでくれるのであれば、送り手のアクションに価値があるはずです。オフラインより温度が伝わりにくいオンラインだからこそ、自己主張ではなく相手のための配慮が必要だと思います。

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