やり方に終始してもインサイドセールスはうまくいかない
前回まで、エンタープライズ・インサイドセールス(EIS)が通常のインサイドセールス(IS)とどう異なるのか、またなぜ今の時代にEISが必要なのかを述べてきました。ここからは、どのようにしてEISの組織づくりを進めればいいかを考えていきたいと思います。
EISの導入に期待することは、会社によってさまざま。もっともよく聞かれるのは”効率化”です。本連載でも、移動を必要としないISならではのメリットをたくさん挙げてきました。単位時間あたりの生産性にも触れ、商談や担当顧客の数だけでなく、経験の蓄積もFSと比べてハイペースでなし得ることを取り上げました。
一方巷では、効率性の部分ばかりが強調されていることに加え、容易に取り組みやすいというイメージが先行してしまっていることで、誤解が生まれている印象を受けます。そのためどんな人材がISに向いているか、何をKPIに設ければいいか、どんなトレーニングをすればいいかという方法論に終始しがちです。
本来ISの導入で行うことは、セールスモデルの刷新です。フィールドセールス(FS)も含め、営業に携わるすべての人がこれまでのセールスの在り方を見直し、セールスを通じてどのような価値を提供するのか、それをどのような仕組みで体現するのかを見直していくことに意味があります。“IS”という機能を、従来の組織体系のすき間に単にはめ込むというものではないのです。
EISとなれば、扱う商材も、顧客の環境も、そして社内の関係者も複雑になります。当然ながらクロージングに至るプロセスや時間軸の捉え方、理想とする顧客との関係性や最適な社内の体制は、会社ごとに異なってくるはずです。つまり、「○○をすれば必ず成約が■倍になる」という万能な魔法は存在しません。それぞれの企業が自分たちの組織に合った仕組みを、編み出していく必要があります。