数字の設定に正解はない
前回から、エンタープライズ・インサイドセールス(EIS)の組織を立ち上げる際のフレームである「Inside sales deployment model」の各項目について解説しています。今回は4の「4.KGI/KPI設計とKey Metrics設定」からです。
ここはみなさん関心も高い項目でしょう。リードの流れや成約、セールス活動の効果を検討するうえで、数値は非常に参考になります。それにインサイドセールス(IS)ではデジタルツールを活用する分、データを集めやすい環境にあります。合理的に判断するのにKGIやKPIを設け、数字を利用することはとても大切です。数字を扱ううえで注意すべきは、
- A:何を指標に置くか
- B:目標数値をどのように置くか
の2点です。Aについては、まずコンバージョンレート(成約率)は外せません。野球で言えば打率にあたり、成約率抜きにして状況の良し悪しを図ることはできないでしょう。とはいえ契約に関係する数字を、つぶさにウォッチする必要はないと考えます。指標を設け過ぎると、数字に縛られて柔軟に対応しづらくなるものです。セールス活動では長期的な成果を見据えた結果、ある指標が一時的に下がるという場合も出てくるでしょう。数字でがんじがらめになると、期単位での目標未達が気になり短期視点に陥りがちです。
Bについても同様です。ISが担う顧客の数が100件の場合と20件の場合では、コンタクト率30%という数字への評価は、まるで違ってくるでしょう。とにかく数値を上げるという考え方では、それぞれの業務が作業と化してしまい、それこそテレアポと変わらなくなってしまいます。数値として表れる背景の部分を丁寧に読み取り、表面的な判断に終始しないことを意識したいものです。
A、Bともにいえるのは、1の「全体像と変革のポイント」で定めたビジョンに立ち返り設定することです。セールス全体の理想とする状態、ISの望ましい在り方を検討しているのだから、その再現に直結する指標を盛り込むようにします。CRMやMAのベンダーの意見は参考にはなりますが、「こうしたら○倍になる」という謳い文句を鵜呑みにするのは考えものです。
ちなみに前回取り上げた2と3、および4は同時進行で設計していきます。たとえば先ほど挙げたコンタクト率の話は、3のカバレージ戦略とも関連の深い内容です。それぞれの項目との整合性がとれていなければ、うまく機能しません。2を一度設定して3を検討した際、再び2に戻って調整を図るなどしながら、バランスを図っていきましょう。