確定情報を顧客から引き出す「具体的な問い」の立て方
前編で定義した「事業成立要件」は、あくまで「顧客がいるか」「法的に可能か」といった社内向けの論点です。これを商談の現場で使えるようにするには、顧客の反応から事実を観測できる「具体的な質問」に変換しなければなりません。
多くの失敗は、社内の論点をそのまま顧客にぶつけてしまうことで起こります。ここでは3つの領域について、明日から使える「具体的な質問」を見ていきましょう。

実現性(How)を「不可条件」で確定する
前編の優先度表でもっとも優先度が高い「実現性」の検証です。
「クラウドでも大丈夫ですか」といった聞き方では、相手のリテラシーによって回答がブレてしまいます。事業成立を脅かす「不可条件」、いわゆるNGラインを具体的に特定していきます。
検証例1:セキュリティ・サーバー要件
曖昧な質問(検証にならない):
質問:セキュリティチェックなどは厳しいですか
回答:大企業なので、それなりに厳しいと思います
これでは「厳しい」の定義が曖昧です。チェックシートが長いだけなのか、構造的にNGなのかがわかりません。
確定させる質問(不可条件を問う):
金融機関様向けの導入において、たとえば「サーバーが国内になければならない」「外部クラウドへの接続は全面禁止」といった、これを満たさないと検討の土台にも乗らない必須条件はありますか
得られる事実:単なる「厳しい」ではなく、「国内サーバー必須」というスペック要件が確定します。これが複数の顧客で共通していれば、プロダクトの仕様自体を見直す必要があります。
検証例2:契約・支払い形態
曖昧な質問:
契約形態にご要望はありますか
確定させる質問:
弊社はクレジットカードでの月次決済を想定していますが、御社の購買ルール上、請求書払い・口座振替でないと契約できないといった制約はありますか
得られる事実:ターゲット企業の購買プロセスに、自社の販売モデルが適合するかが確定します。
顧客課題(What)を「行動」で確定する
多くの担当者は「御社はこの課題にお困りですか」と聞いてしまいます。しかし、「はい、困っています」という回答は、検証データとしては不十分です。課題の深刻度を確定させるには、主観的な感情ではなく、客観的な「過去の行動」を問います。
検証例:代替ツールの有無
曖昧な質問:
質問:この業務の手間について、課題感はありますか
回答:まあ、けっこう大変ですね
これでは深刻度が測れません。「大変」と言いながら、何年もそのまま放置している課題は山ほどあるからです。
確定させる質問(行動履歴を問う):
この課題解決のために、過去にほかのツールを試したり、社内で予算化しようと動いたことはありますか。その際、いくらくらいの予算規模で検討されましたか
得られる事実:具体的なツール名や金額が出れば、そこには既に市場と予算が存在します。「とくに何もしていない」であれば、口では困っていると言いつつも、お金を払うほどの課題ではないことが確定します。
競合優位性(Why Us)を「比較軸」で確定する
競合優位性や収益性を確認する際も、単に自社の強みをアピールするのではなく、顧客が「何を物差しにして比較しているか」を確定させます。
検証例:比較対象の特定
曖昧な質問:
他社製品と比較していかがですか
確定させる質問(比較軸を問う):
今回、もし導入を見送るとしたら、その理由は何になりそうですか。現状のExcel管理のままにするか、それとも他社のAツールを選ぶか、どちらに近いですか
得られる事実:競合が「他社製品」なのか「現状維持」なのかによって、勝ち筋と負け筋が確定します。
