ビジネスとして成立するか? 「事業成立要件」を見定める設計
はじめに考えるべきは、サービスが売れるかどうかの前に、「ビジネスモデルとして成立するか」を疑うことです。
「この事業が成立する条件は何か」と問われた時、多くの現場では「顧客がいること」「競合に勝てること」といった要素が、並列的に挙げられがちです。 しかし実際には、事業成立要件は単なる羅列されたチェックリストではありません。そこには、明確な「優先順位」が存在します。
私は普段、新規事業の成立要件を、次の図表のように「意義(Why)」「事業性(Who / What)」「実現性(How)」の3つに大きく分類し、どこから検証すべきかという優先度を定義しています。
この表でもっともお伝えしたいのは、優先度「高」に含まれる項目がひとつでもNGであれば、ほかがどれだけ良くても事業は成立しないという点です。
優先度「高」には、「What/Who(顧客の実在)」だけでなく、「How(商流などの実現性)」のすべてが含まれています。「顧客がいるか」という点はもちろん重要ですが、それと同じくらい、「法的・構造的に売れるルートが成立しているか」という点は、事業の命運を左右する決定的な要素です。
一方で多くのチームは、優先度「低」に位置づけられる社会的意義や、優先度「中」にあたる競合優位性から議論を始めてしまいがちです。これは、大企業における企画プロセスでは、検証よりも先に「意義」や「ストーリー」の説明が求められる構造に起因しています。
しかし、検証の現場では順序が逆です。「競合より機能が優れているか」「社会的に意義があるか」といった問いは、「そもそも欲しがる顧客が実在し、かつ、問題なく売るルートが存在する」ことが確定したあとでなければ、机上の空論に過ぎません。
0→1営業の初期フェーズにおける最大のミッションは、ビジネス構造(How)と顧客課題(What/Who)を上から順に潰し、「売れる構造が存在するか」を見極めることに尽きます。
その際、もっとも判断を誤りやすいのが「Who(誰)」の定義です。
商談で断られた時、私たちはつい「もっと良い機能があれば売れたのに」と悔やんでしまいます。しかし、新規事業の初期段階において売れない原因の9割は、「機能不足」ではなく「ターゲット(Who)のミスマッチ」です。「今の機能のままでも、パッケージサービスとして提供することで喉から手が出るほど欲しがる相手はいないか」と考え、ターゲットを変える。これだけで、開発リソースを浪費せずに突破口が見つかるケースは大半です。
改めて強調しますが、社内承認のためにストーリーが必要な事情はありますが、現場でその順序に引きずられてはいけません。「意義があるか」という問いは、「そもそも欲しがる顧客がいて、売るルートがある」ことが確定して初めて意味を持ちます。誰にも求められない事業に、持続可能な意義は生まれないからです。
【事業成立要件を見定めるの設計のポイント】
[×] いきなり「機能」や「意義」を定義/議論
[○] まず「商流(実現性)」と「顧客課題(事業性)」の致命的要件を定義する
