「育成」の枠を越え、組織横断の戦略策定へ踏み込む
最後に、これからの時代に求められるセールスイネーブルメントの本質について整理しましょう。
セールスイネーブルメントは、「営業および顧客接点を持つメンバーに、コンテンツ・情報・ツール・プロセス・スキル/知識を体系的に提供し、売上成果を高める再現性ある取り組み(仕組み)」と定義できます。コーチングを中核に据えつつも、何より重要なのは、いかに成果を生み出す仕組みをつくり、組織として「再現性がある状態」を実現できるかにあります。
一般的に、セールスイネーブルメントは、商品知識のトレーニングやセールススキルのコーチングなど「営業人材の育成」という文脈で語られがちです。しかし、近年は、戦略策定や組織・プロセス強化にも深く入り込むことが求められています。
この役割の拡大に伴い、組織設計や仕組み自体も再考が必要です。プログラムのデザインから開発・運用、オンボーディングの検証といった中核業務を成功させるには、人事(HRBP)、製品担当(PMM)、情報システム部門、さらには経営層といった多岐にわたるステークホルダーと連携しなければなりません。コーチングの技術だけでなく、組織を横断して戦略を組み立てる高度なビジネススキルが必要とされているのです。
次世代のイネーブルメントを機能させる7つの専門性
それでは、セールスイネーブルメント組織を創設・再編する際、具体的にどのような機能が必要になるのでしょうか。私たちが提唱するのは、次の7つの専門要件です。
まずは、全体を指揮する「ディレクター」の存在です。この役割には、戦略的な思考はもちろんのこと、現場の知見を持ちつつも、組織全体に指揮命令ができるマネジメントとしての強いプレゼンスが求められます。
ほかにも、営業用コンテンツを磨きあげる「コンテンツデザイナー」、ハイパフォーマーの特定からトレーニングプログラムの設計を担う「セールストレーニングプランナー」、現場の営業マネージャーと連携して伴走支援を担う「セールスコーチ」など、どれかひとつでも欠けてしまうと、仕組みとして機能しなくなります。
組織に7つの専門要件を備えて有機的に結びつけ、現場の変化を捉えてPDCAを回し続ける体制を構築できるか。これが、セールスイネーブルメントの効果を左右します。人材不足の時代だからこそ、この包括的なデザイン能力が、企業の収益成長を実現する鍵となるでしょう。
