マネジメントに欠かせない「目玉焼き理論」 営業に必要な「7つのスタンス」
──T2D3(※1)を超えるペースで驚異的な急成長を続けるニーリー。現在、セールス部門とクライアントサクセス部門(※2)を率いる小川さんのマネジメント哲学を教えてください。
※1 SaaS企業における最高成長速度の目安のこと。ARR1億到達後、ARRを毎年、Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)に成長させていくこと。
※2 ニーリーにおける、カスタマーサクセスの役割を担う部隊の呼称。
マネジメントにおいて、私の中に「管理をする」という感覚はまったくないんです。現在はセールス部門に約50名、クライアントサクセス部門に約110名と、全体で160名を超える組織へと爆発的に拡大しているフェーズ。1人ひとりの状況を細かく把握し、じっくり対話するのは物理的に難しいのが実情です。
そこで行き着いたのが、徹底した「マインドセット」の共有です。細かく管理するのではなく、「言わなくても伝わる、暗黙で自走できる状態」をいかにつくるか。その指針として、絶対に譲れない境界線を明確にする「目玉焼き理論」を実践しています。
目玉焼きの「黄身」は、何があっても譲れないスタンス。「嘘をつかない」「ミスを正直に謝る」「時間を守る」「相手に敬意を払う」など、プロの営業として守るべき絶対的な領域です。ここをはみ出したら、私は烈火のごとく指導します。一方の「白身」は、個人の裁量がある自由な領域です。
境界線が曖昧だと、メンバーは「今日は小川さんの機嫌が悪いから怒られたんだ」と顔色をうかがい始めてしまいます。それでは組織は弱くなってしまうため、この「黄身」にあたる絶対的な基準は、共通認識として徹底的に示し続けています。

そのほか、「営業に必要な7つのスタンス」の浸透にも力を入れています。これは、私自身のこれまでの営業経験を凝縮し、「1. 圧倒的当事者意識」「2. SPEED is POWER」「3. FB(フィードバック)レディたれ」「4. ポジティブ脳」「5. “なぜ”を大切にする」「6. 想像する」「7. 知る」という、成果を出すために必要な7つの姿勢を定義したものです。
たとえ新入社員が1人であっても、スタンス研修は必ず私が担当し、1時間みっちりと向き合います。スタンスは営業としての「足腰」であり、ここが脆弱だと、どんなに高度なスキルを乗せてもいつか崩れてしまうからです。
たとえば、ニーリーの組織を象徴するのが「FBレディ(Feedback Ready)」というスタンスです。これは、「周囲からの指摘やフィードバックを、健全に受け止める準備ができている状態」を指します。
たとえ過去に華々しいキャリアがあっても、一度それを横に置き、真っさらなスポンジ状態で吸収しにいけるか。この「アンラーニング」ができなければ、スキルを習得するスピードは鈍り、成果を出すまでに余計な時間を要してしまいます。変化の激しい現場で成長の角度を決めるのは、スキル以前に、この「吸収するスタンス」があるかどうかなのです。
──「スタンス」こそが、ニーリーの強さの源泉だとわかります。ただ、ときにご自身やメンバーが、スタンスを見失いそうになることもあるのではないでしょうか。そんなとき、どのように向き合ってきましたか。
もちろん、私も日々悩み、揺らぐことはあります。ただ、どんなトラブルやクレームに直面しても、最終的には自分の中にある「感謝の部屋」に入ります。
落ち込んでいるうちは、まだ「自責」ではありません。どんなに目が腫れるほど泣きそうになっても、最後は「この出来事のどこに感謝できるか」を見つけ、感謝の部屋に入る。そこまでやりきって初めて、人は正しく前を向けるのだと考えています。
そのために私が実践しているのが、徹底的な「言語化」です。心の中にあるモヤモヤをすべて言葉にして外に出すことで、絡まった感情を解きほぐしていくんです。
メンバーが苦しんでいるときも、私が壁打ち相手となって「言語化」を全力で手伝い、モヤモヤを一緒に紐解いていきます。
丁寧に紐解いてみれば、スタンスを見失ったのではなく、実は特定の出来事や誰かのひと言にショックを受けて、一時的に世界のレンズが歪んで見えていただけだった、ということがほとんどです。
課題の本質を整理するお手伝いさえすれば、私が特別なアドバイスをしなくても、メンバーは自らの力で前に歩き出せます。そうしてメンバーが本来持っている力を引き出すことが、マネージャーである私の役割だと思っています。
