成果を挙げるトップセールスやリーダーは、常に学びの手を止めません。一体どのような書籍を読み、日ごろの戦略に落とし込んでいるのでしょうか。「営業リーダーの本棚」、今回はトップランナー5名に「組織変革を目指す営業リーダー」におすすめしたい書籍をご紹介いただきました。
変革には「言葉のチカラ」が必要だ!
セレブリックス 今井晶也さんのおすすめ『言語の本質』
新しいことにチャレンジするとき、勇気がいりますよね。答えをもっていない取り組みを推進する際は、誰でも「本当に大丈夫か」と不安になるものです。
このように営業組織の変革を起こそうとするあなたの意思とは裏腹に、メンバーは「組織の変革」に対して不安や反対意見を抱くこともあるでしょう。
そこで注目したいのが「言葉のチカラ」です。変革を起こすリーダーは言葉を通して「旗を掲げ、方針を示す」必要があります。いかに高尚な戦略があったとしても、「私たちならできる」という“共信力”とモメンタム(活気・勢い)を高めなければ、改革の火は途絶えてしまいます。それほどに「言葉選び」と「伝え方」は重要なのです。
この書籍をおすすめする理由は、「これでもか」と唸るほど言語についての探求と示唆を与えてくれるからです。新たな挑戦に積極的なリーダーこそ、改めて言葉と向き合ってみるのはいかがでしょうか。
2025年もエンタープライズセールスが熱い!
インサイドセールスプラス 茂野明彦さんのおすすめ『エンタープライズセールス』
分業型のセールスがこの10年、 大きなトレンドとなりました。しかし、SaaS企業が大手企業向けに製品提供できるようになったことも手伝って、 2024年はエンタープライズセールス、 つまり大手向け営業のニーズが高まったように感じます。
大手向けにはマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスマネージャーまでがひとつのチームとして稼働しますが、このような組織は欧米では“POD型組織” と呼ばれています。
本書は大手企業の営業担当、マネージャーはもちろん、 これから志す方、そして分業からチームセリングへ挑戦する組織におすすめの1冊です。
合理的なお客様を想像していませんか?
TORiX 高橋浩一さんのおすすめ『予想どおりに不合理』
「人は合理的に動くものではない」──。そう頭ではわかっていても、日常的なビジネスの現場では、つい「合理的に動くお客様」を想像していろいろな設計をしがちです。しかし、お客様の選択は非合理的な要因に大きく左右されているのが現実です。
人は感情や直感、そしてちょっとした環境の変化によって、驚くほど予測できない行動をとるものである……。本書では、実験に基づいたエピソードを通じて、人間の意思決定の非合理性がどのように働くのかを鮮やかに解き明かしています。「価格設定や選択肢の提示を見直したい」「お客様により強く訴求する方法を学びたい」と考える営業組織にとって、まさに必読の1冊です。個人的には、本書の前半に出てくる「雑誌購読プラン」のエピソードを読むだけでも、お釣りがくるぐらいに元が取れると思います。
いかに、戦わずにして勝つのか
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 千葉友範さんのおすすめ『孫子に経営を読む』
兵法は、中国であまたの国が乱立し、秦が中国統一を果たすまでにつくられた戦略指南書です。兵法というタイトルから、戦にいかに勝つのか、その方法が書かれていると思われがちですが、戦争においては「勝つことが最善ではなく、戦わずして勝つことが最善である」と述べられているように、情報戦の重要さなど、戦わない方法が数多く記されています。
本書は、経営学者でもある伊丹先生が、兵法を経営に応用するための解釈を加えた書籍であり、ライバル企業が群雄割拠する中におけるビジネスリーダーとしての心構えを教えてくれます。不確実性の時代と言われて久しい現代において、企業がどのように生き残るのかを示唆する本書は、まさに今の時代のリーダーたちにおすすめの1冊です。
自分の「軸」「原理原則」はあるか
ウェルディレクション 向井俊介さんのおすすめ『占領を背負った男』
現代は変化のスピードが加速しており、柔軟に考え方や行動を変える力が求められています。しかし同時に、自分の中に大切にすべき「軸」を持つことも、これまで以上に重要になっています。とくに営業パーソンにとっては、生成AIに代表されるように技術の進化に伴い、求められるスキルが急速に変化していく中で、自分自身の成長を模索することが欠かせません。
ただし、ビジネスの本質や商売の原理原則は果たして変わるのでしょうか。本書は、戦後の日本でGHQとの折衝を通じ、当時の首相、田中角栄と共に政治や経済の礎を築いた白洲次郎の人生を描いています。彼は「軸となる原理原則」を持ち、GHQという大きな権力にも屈せず、正義を貫き通しました。現代の激動の中でこそ、私たちも改めて「自分の軸」を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。ぜひ本書を手に取り、白洲次郎の思想や行動に触れてみてください。